SCORE CARDBACK NUMBER

夢を追い続ける男の自己改革。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph by

posted2005/09/01 00:00

 西岡利晃(29歳)が9月3日の後楽園ホールで元東洋太平洋S・バンタム級王者ペドリート・ローレンテを相手に今年初めて日本のリングに上がる。

 西岡といえば、ウィラポンに4度挑戦してついに勝てなかった男──である。今年に入り長谷川穂積が辰吉、西岡の果たせなかったウィラポン攻略に成功しチャンピオンになってしまった今、ファンの目に西岡は殊更「過去の選手」と見えるかもしれない。だが当人はまだまだ意欲衰えず、最後のウィラポン戦後1階級上のS・バンタム級に上げ「5度目の正直」を期している。現在の標的はWBA王者マヤル・モンシプールだ。

 ところで、ウィラポンとの第4戦を機に西岡の戦法には目立った変化がうかがえる。それまで「打たせずに打つ」というこのスポーツの理想を追求し続けた男が、一転して積極的に打撃戦を挑むようになったのだ。時には足を止めての打ち合いも辞さない。当然相手の攻撃にさらされる危険も大きくなる。

 ベテラン・ボクサーがガラリと戦法を変えることがある。肉体的に衰えがきたときだ。アウトボクサーが足を使えずにファイターに転じたり、逆にエネルギッシュなファイターが体力を落としてボクサーになったり。しかし西岡の場合はそうではなく、意識的に変革を目ざす“確信犯”だ。「いつでもど突き合いの気構えでやらなければ、世界は獲れない」。結果は出せなかったもののこれがウィラポン戦で得た教訓だという。

 ウィラポン戦後中島吉謙との死闘のような殴り合いで判定勝ちし、今年4月マルセイユで顔見せした際も、前へ前へと出てアバルイをねじ伏せるなど、嫌でも変身ぶりが目についた。この戦法、観る方は面白いが、従来の西岡のスタイリッシュなボクシングを好むファンは、ハラハラさせられることだろう。

 帝拳ジムも稲田千賢、粟生隆寛ら若手が次々と育ちつつあり、今や西岡は兄貴分格。出身地兵庫のジムからプロ・デビューして11年目。その間にはアキレス腱断裂で引退を覚悟したこともあった。

 今年1月には美帆夫人と入籍も果たし、個性派もすっかり大人のボクサーになった感が強いが、といって決して枯れてしまったわけではない。「世界のベルトがほしい」と、見果てぬ夢を追い続けている。

関連キーワード
西岡利晃

ページトップ