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敗北の痛みを癒した、南半球への旅。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2007/11/29 00:00

 今年5月、ダーク・ノヴィツキ(ダラス・マーベリックス)がMVPを受賞したときの表情が忘れられない。

 本来、嬉しく誇らしい場のはずなのに、終始うつむき加減で、無理に笑った顔がこわばっていた。MVP受賞の喜びよりも、プレイオフで敗れた痛みがにじみ出ていて、見ているだけで痛々しいほどだった。

 ノヴィツキにとって、昨季プレイオフ1回戦でゴールデンステイト・ウォリアーズに敗れた衝撃はそれほど大きかった。レギュラーシーズン67勝15敗の成績で第1シードを取り、今年こそ優勝と思っていた矢先の、1回戦敗退だったのだ。

 「何から何まで、キャリアのすべてのことを自ら問いただしていた」とノヴィツキは言う。

 街にはチームに対する批判やチーム改造の議論が渦巻いていた。しかも、テレビをつけるたびに他のチームがプレイオフを戦っている映像が目に入った。

 そんな中にいることに我慢できなくなったノヴィツキは、「できるだけ遠くへ」旅に出た。行き先はオーストラリア、ニュージーランド、タヒチ。キャンピングカーで各地を巡り、自然の中を歩き、友人でもある師匠と語り合い、時にはギターを弾いて5週間を過ごした。この旅の間、一度もしなかったことが3つあった。髭を剃ること、バスケットボールを触ること、地球の裏側で行われていたNBAプレイオフを一試合通して見ること。

 「あの旅のおかげで、またバスケットボールを楽しく思えるようになった」とノヴィツキは言う。

 20歳で母国ドイツからダラスにやってきたノヴィツキも今や29歳、NBA10シーズン目のベテランだ。そして、10年前にはプレイオフにも出られなかったマブスは、ノヴィツキを柱に優勝争いの常連チームへと成長してきた。2年前にはNBAファイナルまで進んだが、マイアミ・ヒート相手に先に2勝しながら4連敗、目の前で優勝を逃している。

 「チームを勝てるようにすることのほうが簡単だ」とノヴィツキは言う。「実際にはそれも簡単なことではないけれど、最後まで行くことよりは簡単だ。最後の一歩は、本当に難しい」

 今季もまた、ノヴィツキの“最後の一歩”への挑戦が始まった。

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