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4大メジャーで見えた、技術よりも大切なもの。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2004/09/09 00:00

4大メジャーで見えた、技術よりも大切なもの。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

 ビジェイ・シンが全米プロゴルフ選手権でプレイオフの末に優勝した。

 シンは下積み生活の長い選手である。'98年、36歳で全米プロに優勝するまで、アジア・ツアーをはじめ、南ア、欧州ツアーなどを転戦して腕を磨いてきた。フィジー出身の彼には師匠がいなかった。彼にとって最大の師は、ツアー転戦するコースの練習場。一番遅くまで練習する選手として有名だった。アジア・ツアーで戦っていたときには、ホテル代が払えずに借金をしたこともあった。

 シンに限らず、今年の世界4大メジャーの勝者には、苦難とそれを乗り越える意欲と情熱があった気がする。

 マスターズでメジャー初優勝したP・ミケルソン(米)は、土壇場で自滅することが多く、「無冠のトッププレイヤー」との揶揄に耐え続けてきた。全米オープン覇者のR・グーセン(南ア)は、'01年の同大会に勝ったものの、チャンピオンとしての重圧で、その後スランプに陥った。再起の優勝だった。全英オープンを制したT・ハミルトン(米)は、米ツアーに何度も挑戦して、いつもシード落ちし、日本ツアーで力をつけた選手だった。

 アテネ五輪で2つの金メダルを取った水泳の北島康介は「ほんとうに金メダルを勝ち取りたいという思いが強い選手が生き残る」と言っていたけれど、まさにメジャーでも勝利への貪欲さが勝敗を左右するのだ。

 シンは、今季米ツアー5勝。世界ランキング6年間トップのタイガー・ウッズ(米)に肉薄し、世界1位の座を脅かす存在になった。

 「メジャーでもっともっと勝ちたいんです」

 今年42歳になるが、シンの闘争心は少しも色あせていない。

 一方のウッズは、この2年間メジャーで勝っていない。米ツアーでも今季1勝と不振が目立つ。デビュー以来500億円以上稼いでいるウッズには「勝ちたい」という意欲が乏しいのではないか、と思うときもある。少なくとも、シンが勝ちたい一心で犠牲にしてきた時間や生活、そして精進する気力が、いまのウッズを上回っていることは確かだろう。

 いつだったか僕はジャック・ニクラスに質問したことがある。なんでそんなに頑張れるのか、と。彼は「最後は、エゴです。勝ちたいという欲望と気力です」と答えた。

 最後に問われるのは、技術ではない。

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