先発する内田をベンチで見つめていた長友。

　ダービーで出番のなかった長友も、大舞台に期するものが大きかったはずだ。

　しかし、CL決勝トーナメントにおけるホームでの第1戦の戦い方は“無失点”が鉄則。守備力を重視した布陣が先発に並ぶ中、長友は敵の右サイドで先発する内田をベンチで見つめた。

　果たして、シャルケGKのノイアーの不用意なヘディングクリアをダイレクトで合わせたスタンコビッチが27秒で奪った先制弾。願ってもいない先取点にインテル・ベンチは沸き立った。

　ところが、新監督ラングニックを迎え入れたばかりのシャルケは、アウェイの地で前に出てきた。

「インテルはまだダービー敗戦のショックから立ち直っていない。わがシャルケはそこをつく」

　17分にDFマティプに同点弾を決められると、インテルはミリートの今季CL初ゴールで再びリードを奪う。エースの名を呼ぶ咆哮がサン・シーロにこだまする。だが、守備の集中力を欠いた40分に、シャルケFWエドゥが同点弾を決めた。個人能力で優位に立つはずのインテルが、じりじりと追いつめられていった。

交代のわずかな隙に5点目が刻まれ……長友は天を仰いだ。

　後半が始まる前、インテルは珍しく円陣を組んだ。

　しかし、ミリートへボールを集めようという思いが強すぎて、守備への意識が疎かになる一方に。百戦錬磨のはずのベテランたちの体力も気力も、3日前のダービーから回復してはいなかった。

　8分、ペナルティエリア（PA）内の狭いスペースをFWラウルに破られる。彼の欧州カップ戦歴代最多ゴール数更新は、逆転を意味した。

　4分後には、膝の故障をおしてプレーし続けるCBラノッキアがオウンゴールを犯してしまう。

　集中力の切れたDFキブが、17分に2枚目のイエローカードをもらって退場となると、もはや流れは止められなかった。

　30分、長友がレオナルドから指示を仰ぎ、ピッチサイドでモッタとの交代を待つわずかの間に、シャルケの5点目が決められた。長友は腰に両手を当て、天を仰いだ。

【次ページ】　長友と内田の対決が、ついに欧州CLの舞台で実現!!