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“変化”の国で1000勝達成、
20年間で積み重ねた偉業。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2008/12/04 00:00

 アメリカではこのところ、バラク・オバマ大統領の誕生を前に“変化”の風が吹いている。

 NBAはもともと変化の激しいリーグだ。今季も、開幕直後にデトロイトとデンバーの間でアレン・アイバーソンとチャンシー・ビラップス他の大型トレードが成立したり、シアトル・スーパーソニックスがオクラホマシティ・サンダーになったり、審判が判定の際にビデオを参考にするインスタント・リプレイの使用枠が増えたり、刻々と変化していくリーグであることがうかがえる。

 そんな中で、ユタ・ジャズのヘッドコーチ(HC)、ジェリー・スローンがひとつの偉業を達成した。ジャズのHCとして1000勝目に到達したのだ。リーグ通算記録でも1000勝以上をあげたHCは史上5人しかいないのだから、1チームでの1000勝は断トツ1位の記録だ(2位の故レッド・アウアバックが795勝)。この記録をスローンは20年かけて達成した。記録自体も凄いが、変化が激しいリーグで、20年もジャズのHCを続けていること自体が特筆すべきことだ。何しろ20年前といえば、まだロナルド・レーガンが大統領だった時だ。

 スローンの長期政権を可能にしたのは、ひとつにはオーナー、ラリー・ミラーの「ジェリーが望む限り彼がジャズのHC」という方針だ。スローンは毎シーズンのようにチームをプレイオフに導いているが、その一方で一度も優勝を果たしていない。それでもミラーはスローンを首にしようとはしなかった。

 一方でスローンもジョン・ストックトンとカール・マローンというスーパースター・コンビが引退し、チームが再建期に入ってもコーチを辞めることはなかった。妻が癌に侵され、亡くなったときには悩んだが、「私にはバスケットボールしかない」と、継続することを選んだ。

 そんなスローンがいつも口癖のように言うのが、「主役は選手たち」だ。話題が自分のことになると極端に居心地が悪そうになり、「それより選手たちのことを話そう」と話をずらす。そんなスローンの心情を汲み、ジャズも1000勝のセレモニーを一切行わなかった。

 試合後に祝福を受けたスローンは言った。「それより、シーズン5勝目をあげることができたことのほうが重要だ」

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