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'08年、各チームを苛むかつてないスリル。 

text by

今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2008/04/17 00:00

'08年、各チームを苛むかつてないスリル。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

 今年のF1マシンは、サーキットで“ダンス”を踊っているかのようだ。左足でブレーキペダルを踏み付け、シフトダウンするときには後輪タイヤがロックしかかって、不安定な挙動を示す。コーナーを抜け、右足でアクセルペダルを踏み込んでいくときにも後輪タイヤがホイールスピンしかかって、滑りやすくなる。とにかくリアがふらふらと落ち着かないのだ。

 それでもスピードレベルそのものは昨年と同じかやや速い。つまりドライバーたちは、減速、加速を繰り返すたびに神経を尖らせて挙動の変化に反応し、適切な修正操作を瞬時に行わねば、スピンするかタイムロスするか、いずれにしろ敗れていく。難しいというかとてもデリケートになったドライビング。レースにおける人間の比重が一段と高まった。

 エレクトロニクス・コントロール・システムの規制強化、'08年の新レギュレーションについては前回紹介した。実際に開幕後、予選タイムアタックでは区間ベストタイムを揃えるのが難しくなり、Q1、Q2、Q3と進んでいく者の順位がめまぐるしく変動するようになった。中でもラスト10分間のPP争いは熾烈だ。決勝ではスタートダッシュの成否が1コーナーでのポジションの奪い合いを激化させ、順位が定まるまで数周の間あちこちで競り合いが続く傾向になっている。テレビカメラ・スイッチング泣かせの“混戦模様”。現地放送席にいる我々も、眼をモニター画面だけでなくコース上にも絶えず配らねばならず、全くもって忙しい。

 レースペース、タイム推移にもばらつきがいままでよりも見て取れる。集団がいくつかでき、最近めったになかった3台がサイドバイサイドのままコーナーに入っていくシーンもある。こういうバトルが続くとピットストップも緊迫、メカニックへのプレッシャーが増してミスも起きやすい。レース戦略も狂いがちになり、想定していた作戦の変更を余儀なくされるチームも目立つ。

 すべてがコンペティティブになったレースはゴールしたドライバーの疲労度を見れば良く分かる。マレーシアGP表彰台で2位のR・クビサは23歳とは思えない形相で立ち、勝ったK・ライコネンも汗を出し切ってしまい顔は真っ赤だった。タフな今シーズンは11月まで続く。

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