SCORE CARDBACK NUMBER

逆境が浮き彫りにしたライコネンの“凄み”。 

text by

今宮純

今宮純Jun Imamiya

PROFILE

photograph byHiroshi Kaneko

posted2008/07/10 00:00

逆境が浮き彫りにしたライコネンの“凄み”。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

 フェラーリの速さが際立っていたフランスGP、K・ライコネンをまたしても不運が襲った。前戦のカナダGPではピットレーン出口で赤信号を守って一時停止していたところをL・ハミルトンに追突されリタイア。まるで“通り魔”に遭ったような状況だったが、このレースでは突然フェラーリF2008のエキゾーストパイプに不具合が起き、エンジンパワーが急激にダウンしたのだ。生中継で解説中の34周目、それまで1位だったライコネンのペースが2秒も落ちたのに気付いてあわてて目を走らせ、放送席がちょうどフェラーリ・ピットの真上だったので立ち上がって目視でもチェックを続けた。

 国際共同画面とは別のモニターで、ライコネンが懸命にピットと無線交信しているのが分かったが、僕らには内容が聞こえない。しばらくして原因が判明するのだが、推定で30馬力を失いながらも、そこからライコネンはあらゆるテクニックを駆使して2位をキープしようとした。直線のスピードロスをコーナーでカバーし、絶体絶命の時にエンジンにかかる負担を抑えて致命傷にならないぎりぎりのペースで、3位につけるJ・トゥルーリとのギャップを保とうとしたのだ。そのさまに僕は見とれた。しかもレース終盤に小雨が降ってくると、マシンが完調で首位に立っていたF・マッサよりも速いタイムまで出したのだから、まさに「人間力」だ。ライコネンの失速によって勝利、初めてポイントリーダーに進出したマッサはガッツポーズで喜んでいたが、2位でこのピンチを切り抜けたライコネンはクールな態度を崩さなかった。8点追加で43点、首位マッサとは5点差、2位のR・クビサとは3点差、勝利は逃したものの大きな“前進”だ。

 夏の陣、フェラーリはタイヤマッチングで優り、マクラーレンはマシンセットアップでわずかに及ばず、ハミルトンにもミスが目立つ。BMWもハンドリングで乱れがある。第9戦のイギリスGPでもフェラーリがアドバンテージを見せ付けるか。

 ライコネンは不運ながらも第4戦以降すべてのレースで最速ラップを記録中とスピードではNo.1。やはり彼には昨年のような後半に追い上げるパターンが似合う。首位マッサも戦々恐々だろう。

関連キーワード
キミ・ライコネン
フェラーリ

ページトップ