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「走るサッカー」という言葉に走る前に! 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2006/07/24 00:00

「走るサッカー」という言葉に走る前に!<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

 また標語がひとり歩きし始めた。日本代表の監督候補にイビチャ・オシムの名前があがると、TVでも新聞でも「走るサッカー」という言葉が注目されるようになった。ちょうどドイツW杯で、日本選手が暑さに負けて走れなかったこともあり、「走るサッカー」への期待が大きくなっているのだろう。

 ただ──。8年前の「フラット3」、4年前の「黄金の中盤」という言葉が使われたのと同じように、今回もサッカーの本質が見落とされているような気がする。

 まず「日本代表は、なぜドイツW杯で走れなかったのか?」を考えてみて欲しい。コンディション調整に失敗した、体力がなかった、と答える人が多いと思うが、サッカーには別の見方があることも忘れてはいけない。

 ボン合宿で元日本代表の風間八宏氏に会うと、風間氏はこう指摘していた。

 「日本が動けなくなったのは、無駄な動きが多すぎるからだよ。ポジショニングが悪い。もっと考えてポジションを取れば走る必要もないし、疲れることもなかった」

 オランダの英雄ヨハン・クライフは、TV中継でよくこんなことを言う。

 「このチームは、ポジショニング・プレーができてない」

 ピッチの11人のポジショニングがうまくいっていれば、走らずして相手にプレスをかけられるし、パスをまわすことができる。そういう基礎が欠けていたから、ジーコジャパンは相手より早く暑さにやられて動けなくなってしまった。

 ポジショニングの基礎が成り立っているうえで、意味のある「走り」をすれば日本にとって大きな武器になるが、基礎がなければいくら走っても体力を消耗するだけだ。そんなサッカーはJリーグでは通用しても、世界のトップでは通用しない。もちろんオシムはそれを理解しているだろうが、今後もし標語がひとり歩きするようなことがあれば、ポジショニングがいい選手に対して「アイツは走ってない」という不毛な批判が出てくる恐れもある。

 「走るサッカー」には大賛成だが、その前にポジショニングの大切さも忘れてはいけない。せっかくオシムという知将が代表監督になってくれるのだから、いい加減、標語に頼るのは止めよう。

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