SCORE CARDBACK NUMBER

律儀なボクサーに届いた、
「怪物」からの挑戦状。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2006/09/28 00:00

 「金をかければ、そんなに簡単に世界挑戦ができるのか」

 “亀田批判”で物議をかもした具志堅用高さんの毎日紙上の発言は業界内から批判もされたが、ある面真実を突いている。世界ランキングに入っても、視聴率の取れそうなキャラでなければ、テレビ局はその気にならない。訪れるかどうか分からない挑戦の機会を待ち続ける世界ランカーはいくらでもいるのである。

 嶋田雄大(35)もその1人だ。10代の頃タイソンに憧れ、出身地富山から単身NYキャッツキルに飛び夢を追ったこともある。日本ライト級王座に2度挑戦し失敗。22度防衛のリック吉村が厚い壁だった。その後3度目の挑戦でリック返上の王座を獲得。稲田千賢、長嶋健吾(現在は建吾)らの国内強豪を撃破して5度守った日本王座を返上したのは、世界挑戦の準備に専心するためだった。以来2年近く、律儀なボクサーは出番を待ち続けている。所属のヨネクラジムは5人の世界王者を育てた大手ジムだが、その実績をもってしても今は簡単に世界戦ができないのだ。

 嶋田のボクシングはお世辞にも派手とはいえない。だがレスリングで鍛えた頑丈な肉体を武器に、経験と弛まぬ研究によって培った個性的な戦法は玄人芸。ジムの先輩柴田国明氏(元2階級世界王者)の特別指導でさらに磨きがかかった。

 そんなベテランに突如好機到来。1階級落として、S・フェザー級で挑戦しないかというのだ。相手はデビュー以来20連続KO(18連続初回KO)で世界王座に上り詰めた南米の怪物エドウィン・バレロ。開始ゴングから速戦即決スタイルで、一撃必倒の威力はすでに2度日本のリングで証明済み。対戦者が尻込みするほど危険だからこそ、嶋田にお呼びが掛かったのに違いない。11月日本で挙行の線は延期されたが、決まればボクシングファンならずとも楽しめる魅力カードだ。

 ベスト体重のライト級から約2kg減量するリスクも負うが、それでも嶋田は「やりたい」という。時間とも競争しなくてはならないベテランには、標的を選ぶ余裕などないのだ。ひょっとして、スタートからダッシュしてくる倒し屋バレロの必殺ブローをかわし続け、後半に勝機が訪れるのでは……そんな期待を抱かせるスキルとハートが、嶋田にはある。

関連キーワード
嶋田雄大
エドウィン・バレロ

ページトップ