SCORE CARDBACK NUMBER

千秋楽の価値ある勝利。2強時代に戻した朝青龍。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2008/04/17 00:00

 2場所連続で横綱同士の相星決戦となった千秋楽。白鵬、朝青龍の激突に浪速のファンがわいた。先場所同様の手に汗握る力相撲が期待されたが、展開は予想外のものとなった。

 注目の立合い、前みつをひいての速攻かと思われた朝青龍は、左胸から当たっての両差し狙い。やや立ち遅れた感じに見えた白鵬が右差しを封じ、左四つの形に組み止めた。本来ならば腰を据えて廻しを取りに行くはずの白鵬が、左手を返して一気の勝負。胸を合わせれば分のいい白鵬の信じられない攻めだった。朝青龍は土俵際まで寄られたものの、体を開いて右からの豪快な小手投げで対応。勢いのついていた白鵬は一回転して土俵下へと吹っ飛んだ。勝負時間わずか4秒の呆気ない幕切れ。直後、朝青龍の喜びが爆発した。

 左の握りこぶしに力を込めてのガッツポーズ、さらに花道を下がる途中で観衆に両手を高々と上げ、これまで見せたことのないような、はじけんばかりの笑顔を見せた。この喜びは、支度部屋では感激へと変わっていた。表彰式に備えて髪を直してもらう朝青龍の目は潤み、この優勝に至る過程の苦しさやつらさを思い起こしていることがうかがわれた。優勝インタビューでは関西弁を織り交ぜて余裕綽々の朝青龍に戻ったが、本人自身、最も記憶に残る優勝になるのではないだろうか。白鵬時代の到来に待ったをかけ、再び両横綱時代へと引き戻す価値ある優勝。貴乃花と並ぶ史上4位、22回目の優勝。白鵬にとっては、さぞや悔いの残る取り組みだったに違いない。

 決戦を前にして白鵬は、今場所の自分の相撲を「じっくり攻めている。慌てずにやっているのがいい」と分析していた。朝青龍戦についても「じっくりと、余計なことをしなければ勝てる」と自信を深めていた。沈着冷静を売り物にしている白鵬が、組み止めた瞬間、なぜあれほど勝負を急いだのかは謎である。不十分の左四つだったからか、それとも朝青龍を甘く見たのか。取り組み後に右足を引きずる姿が見られたが、ひょっとしたら、万全の状態で臨めないために選んだ作戦だったのか。

 敗軍の将、兵を語らずは勝負の世界の鉄則。しかし、白鵬にはあの瞬間の決断の理由を是非とも聞きたいものである。

関連キーワード
朝青龍
白鵬

ページトップ