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新ヤンキースタジアムは
「聖地」となり得るか。 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2009/07/24 06:00

新ヤンキースタジアムは「聖地」となり得るか。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

本塁打が出やすいのも話題。ヤンキースの本塁打数125本(7月6日現在)はリーグトップだ

 新旧二面性を持つ球場――85年もの歴史に幕を閉じた旧ヤンキースタジアムに代わり、16億ドルをかけて完成した新球場を訪ね、そんな印象を持った。

 今季に入り、新球場は常に話題の的だった。記者同士では「行ってみた?」という会話が日常茶飯事。テレビでも新球場を探訪するレポートが流れるあたり、さすが“聖地”と称された特別な場所だ。すでにプレーした選手からは「足を踏み入れた瞬間、前の球場にいるかのような錯覚に陥った」という感想を聞いていた。

伝統の継承か。それとも過去の模倣か?

 実際に旧スタジアムを踏襲した部分は多い。サイズや形状は受け継がれ、外観も先代を十二分に想起させる設(しつら)えになっている。一方で新しい設備も満載。野球を文化と自認するアメリカらしく、絵画を販売するギャラリーやメモラビリア(記念品)店も軒を連ね、老若男女が飽きない工夫がそこかしこに凝らされている。

 そんな新球場でプレーしたばかりのイチローが、いみじくもこう表現した。

「似せて作ってんでしょ? なんか変な感じではあったわね。ヤンキースタジアムなのに、ヤンキースタジアムじゃない感じ。割と最近の新しい球場っていう雰囲気」。当意即妙。古きよきものの継承と、過去にすがる模倣とは紙一重である。その意味で、目新しさがゆえに注目を集めてはいるが、現時点で球場の評価は定まっていない。

新球場の値打ちが決まるのはこれからだ。

 件のメモラビリア店で、年老いた強面の係員と出会った。興味本位で一番高価なグッズを尋ねると、当時MVPを獲得したD・ジーターのサインが入ったワールドシリーズ実使用のベース('00年)だという。「Ask for Price」とあったので、そのまま問うと「いきなり値段を聞くなんて野暮。自分で価値を見出せないのか。オマエそれでも野球のファンか?」と詰め寄られてしまった。1万ドルと教えてもらうまでに、さんざんお小言を聞かされたが、そんな誇り高き係員にこそ無形の伝統と矜持を感じた。

 聖地は初めから聖地だったわけではない。スーパースターによる幾多の名勝負が繰り広げられ、それを目の当たりにした無名の人々による伝承が味付けとなり重みになる。立派な箱は完成した。新旧が融合するか、乖離してしまうのか。真価はこれから新球場に関わる全ての人に委ねられていると言っても過言ではない。

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