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新天地に挑む大道に、王監督が贈った言葉。 

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永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2006/12/07 00:00

 大道典嘉に戦力外が通告されたのは、プレーオフ敗退が決まった翌日のことだった。家族で食事に向かう車の中で、大道の電話が鳴った。

 「もう食事どころではなくなって、家に帰って今後について考えましたよ」

 寝耳に水だった。ホークス一筋19年の37歳。南海を知る最後の生き残り。走れなくなったが、右の代打の切り札としての意地がある。プレーオフ第1ステージでは、先発で3番も打った。まだまだやれると思っていただけに、腹が立った。

 大道は、野球人生の後半をともに過ごした恩人、王貞治監督に電話を入れた。病気療養中にもかかわらず、いつも通りの太い声で、「負けるとこういうことになる。球団はコーチ職も考えているようだが、お前の気持ちはどうなんだ?」と聞かれた。「まだ現役にこだわりたい」と答えて電話を切った。巨人からの打診があったのは、その翌日のことだった。

 「バットを短く持って不細工な姿で球に食らいつく。格好じゃなくて魂が入ってるんだよ」

 王監督の大道評だ。常に早出して若手の先頭に立つ。熱心に練習する。勝負強いバッティングはいまだ健在。チーム改革を進めている最中のソフトバンクには不必要でも、右の代打が足りない巨人では、まだまだ生きる道がある。そう思った王監督は、巨人とのホットラインを使って直接掛け合い、教え子に「退路を断ってがんばれ。野球人生を長続きさせるには、優勝に貢献することだ」と告げて送り出したのである。

 11月4日、宮崎で始まった巨人の秋季キャンプに、大道の姿があった。原辰徳監督に参加を直訴したのだ。若手に混じって練習してみて、「まだまだ負けない」と感じた。王監督から聞かされていたV9時代の猛練習は、いまやホークスに受け継がれている、そう思うほどだった。原監督も、「強いチームで育ったベテランはやるべきことを知っている」と練習に対する姿勢を評価した。

 「ホークス魂で監督が使いたくなる選手を目指しますよ」と力強く言った大道。「左殺し」「右打ちのスペシャリスト」と言われた職人は、巨人でどこまでその技を披露できるだろうか。

 老いてますます盛んな男は、初めての新天地で20年目のシーズンを迎える。

■関連リンク► 王貞治「監督日記」 勝算われにあり!【プレイバックNumber99号】(2009年5月21日)
► 職人・大道典嘉に見るソフトバンクの強さ。 (2005年10月13日)

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