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オシムの采配に「仕込み」はあるか。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byNaoya Sanuki

posted2007/11/15 00:00

オシムの采配に「仕込み」はあるか。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 オシム監督が日本代表を率いて1年以上が過ぎ、長所だけでなく課題も見えてきた。そのひとつに「采配が効果的でない」というものがある。

 アジアカップのオーストラリア戦と韓国戦では、相手がひとり退場になりながらも、選手交代で相手を追い詰められず、PK戦に突入してしまった。準決勝のサウジアラビア戦では後半12分に勝ち越し点を決められ、それから3人を投入したが逆転することはできなかった。これではお世辞にも采配がうまい監督とは言えない。

 では、そもそも「いい采配」とは何だろうか。采配がうまい監督には、2つのタイプがある、と私は考えている。

 ひとつ目は、試合前から完璧なプランを用意しておく、ヒディンクのような監督だ。

 ドイツW杯の日本戦前、当時オーストラリアの監督だった彼は、リードされた展開を想定して、ケイヒル→ケネディ→アロイージという順番の交代を繰り返し練習していた。日本戦での逆転劇は、ぶっつけ本番で生まれたのではない。

 当時コーチだったアーノルドは、「ヒディンクは常に試合前日にコーチ陣を集めてあらゆる展開を予想し、それに対する采配を紙に書き出していた」と振り返る。すでに試合前に「劇的な采配」の仕込みは終了しているのである。

 ふたつ目は、途中出場に適した選手を用意する監督だ。前ドイツ代表のクリンスマンはW杯開幕前、初選出のオドンコールをメンバーに入れて周囲を驚かせた。だが、彼こそが秘密兵器だったのである。

 初選出なのでベンチに座らせてもふてくされないし、たとえ出場時間が1分でも全力を出す。さらにこれが一番大事なことなのだが、オドンコールは瞬時にテンションを上げられる性格で、試合の激しさにすぐに適応することができるのだ。クリンスマンはのちに「彼はパッションがあり、試合に動きを与えられるから選んだ」と明かしている。その狙いは的中し、オドンコールはグループリーグのポーランド戦で64分から出場して、決勝ゴールをアシストした。

 効果的な練習メニューを考えられるオシムなら、采配のための準備もできるはず。これからは采配の方の“仕込み”にも注目してみたいと思う。

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