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満面の笑みが物語る、V・ロッシの底力。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2007/10/04 00:00

満面の笑みが物語る、V・ロッシの底力。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

 C・ストーナーのタイトル王手で迎えたポルトガルGPで、逆転チャンピオンにかすかな可能性を残すV・ロッシが今季4勝目を挙げた。第9戦オランダGPから実に5戦ぶりの表彰台。ロッシが4戦連続で表彰台に立てなかったのは、最高峰クラスにデビューを飾って以来のワースト記録である。

 自分のミスによる転倒、エンジントラブルもあったが、ミシュラン(MI)のパフォーマンス不足が、走りと戦略に焦りを生んだ。そんな気分に追い討ちをかけるように、8月にはイタリア国税当局から脱税を指摘され追徴課税を課せられる。パドックでは、レース界の幸運を独り占めしてきたと言われるロッシのツキも、もはやこれまでか、と囁かれた。

 ポルトガルGPは、そんな不名誉な記録と最悪の気分にストップをかけるレースとなった。MIが素晴らしいタイヤを持ち込んだことが勝因だが、同じタイヤを使うD・ペドロサとの終盤の熾烈なバトルは、今季最高の戦いだった。表彰台で大はしゃぎしたロッシは、会見でも満面の笑みを浮かべていた。

 「ケーシーとダニと、実に素晴らしいバトルができた。今日のレースは、タイヤさえうまく機能すれば優勝争いが出来ることを証明した。今回の優勝はいろんな意味で重要だった。ずっと表彰台さえ立てなかったからね。本当に嬉しい」

 この勝利で3位に終わったストーナーのタイトル決定を阻止し、ダニとのバトルも制した。すでにモトGPの中心的存在である若手を抑えての勝利は、ロッシの強さを改めて感じさせるものだった。

 去年はタイトルを逃し、今年もストーナーに王手をかけられた。タイトルを取れないだけではなく、この2年間、ロッシの転倒が増えていることを気にかける者は多い。K・シュワンツやM・ドゥーハンといった名選手がそうだったように、それがタイヤやバイクのせいであっても、ピークを過ぎた証でもあるからだ。

 しかし、ポルトガルGPの表彰台で見せたルーキーのような喜び方は、これこそ、彼をここまで強くしてきた原動力であることを教えてくれた。ひとつひとつのレースで自己完結すること。これが62勝目とは思えない笑顔を見ていると、まだまだ天才でいられるのかもしれないと感じたのも事実である。

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