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聖地アテネで勃発したドーピング事件。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2004/09/09 00:00

 日本勢の大活躍に沸いたアテネ五輪だが、地元ギリシャでは本大会以上に注目された事件があった。シドニー五輪陸上男子200m金メダリストで開会式の聖火最終走者に予定されていたコンスタンティノス・ケンデリスが、開幕前夜に実施されたドーピングの抜き打ち検査を受けず、薬物疑惑が持ち上がったのだ。国際オリンピック委員会(IOC)の担当者はケンデリスと同女子100m銀メダリストのエカテリニ・サヌを検査するために8月12日夜に選手村を訪れた。しかし、なぜか2人の姿はなく、ギリシャの陸連関係者は「自宅に私物を取りに帰った」と説明。IOCはただちに規律委員会を設置し、2人を事情聴取することを決めた。ところが深夜になってケンデリスが運転するオートバイが事故を起こし、後部座席に乗っていたサヌとともに入院したという。ケンデリスらは開幕1週間前に合宿先の米シカゴで行われた検査も受けておらず、「五輪2週間前から閉幕までの間の抜き打ち検査を2度受け損なった選手は失格とする」という規定に抵触するとして大騒ぎとなった。

 2人は18日に行われたIOCの規律委員会に出席し、自ら五輪の資格認定証を返還して出場を辞退。それを受けてIOCは「2人はすでに参加選手ではない」(デービス広報部長)として、失格などの処分は見送った。ケンデリスは「自分の国への責任を感じて辞退する。私は選手村での検査に呼ばれたことはない」と胸を張ったが、肝心のドーピング疑惑は解明されないまま。その後、多数の選手に禁止薬物を提供したとされる米国の栄養補助食品会社と接触していた事実が判明するなど、事件の余波は今も続いている。

 今回の五輪では事前に薬物使用が発覚して出場できなかった選手も多く、大会中も新たな違反者が出た。IOCを始めとする多くの関係者の努力にもかかわらず、世界のスポーツ界からドーピングが消える気配はない。検査方法が進歩しても、それは新たな薬物の出現につながるだけで、抜本的な解決策は見当たらないのが実情だ。もしケンデリスが潔白だとしても、疑われるような行為をしたこと自体を反省すべきだろう。今回の五輪は日本では大いに盛り上がったが、欧米では関心が低かった。その要因の一つが相次ぐドーピング問題にあることを忘れてはならない。

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