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悪役・朝青龍に伍する、善玉の登場を願う。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2005/01/20 00:00

 大関魁皇の初詣、その願いは自らの腰に横綱を巻くことに違いない。先場所、地元福岡のファンの大声援を後押しに、死力を尽くしてつないだ綱獲りの糸。酉年の初場所、あと一歩のところまで迫る、魁皇の再挑戦が幕を切った。

 昨年を一言で表すと「朝青龍独走」の年だった。年間5場所制覇と35連勝という偉業を成し遂げ、大横綱への仲間入りを果たし、また年間獲得懸賞1073本の史上最多の記録も作った。朝青龍にとっては、まさに我が世の春。強すぎるゆえに憎まれる悪役横綱の座は、不動のものとなった。

 お膳立てだけが完璧に出来上がっていく中で、肝心要の正義の味方は、またしても現れなかった。正義の味方とは、もちろん新横綱。しかも相撲が国技と名乗る以上、日本人横綱の誕生をファンが渇望するのは、当然の成り行きだ。昨年1年間の土俵を見る限り、当面の候補は魁皇一本に絞られたといっても過言ではない。持病の腰痛と闘いながら、年6場所全てで2桁勝利。秋場所では賜杯も抱いた。残念ながら先場所は星一つの差で涙を飲んだが、4敗目を防いだ渾身の粘り腰は、魁皇が本気モードに突入した証だ。初めて味わった、綱獲り最終盤の重圧に耐えきった経験は、仕切り直しの初場所で必ず活かされるだろう。

 先場所終盤、魁皇の横綱昇進ラインは揺れに揺れた。「13勝以上の優勝」が「12勝でも優勝なら」になり、最後には「千秋楽にもし勝てば」という声も出た。最終的に見送りという結果で筋は通したが、協会の焦りにも似た気持ちが、当事者の魁皇はもちろん、相撲ファン全てを振り回し戸惑わせたことは、誠に残念かつ後味の悪いものだった。

 朝青龍には2場所続けて勝ったものの、共に優勝が決まった後での取組。また、敗れた3番については、我慢しきれず叩きや抱え込みにいっての完敗。12勝の中には、危ない場面が何度もあった。勝ち越したとは言え、強さよりも脆さのほうが、強く印象に残った。もし、温情昇進などさせようものなら、最も傷ついたのは魁皇本人だったのではないか。

 初場所の最低条件は、勝ち星よりも優勝。誰もが納得する昇進は、丸太のような腕で賜杯を抱く姿だと私は考える。他力ではなく自力での綱獲りを成したとき、魁皇は正義の味方と認知されるだろう。

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