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小橋復帰フィーバーに見るプロレス界の課題。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

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photograph byEssei Hara

posted2007/11/29 00:00

小橋復帰フィーバーに見るプロレス界の課題。<Number Web> photograph by Essei Hara

 「切符ないよ、モンちゃん」。ディファ有明内のプロレスリング・ノア事務所に電話すると、おはようの挨拶の前にこれだった。声の主は、ノアの営業部長、永源遥さんである。

 小橋建太(40)の復帰宣言の反響が凄い。ガンに冒された右腎臓摘出手術に成功して、約1年半ぶりのリングとなる12・2日本武道館。停滞ムードの業界にとっても久しぶりの明るいニュースである。

 小橋フィーバーは、10月7日の後楽園ホール大会が発火点。小橋の正式復帰がコールされると、前売りチケットが発売直後にほぼ完売状態となった。そして、10・27日本武道館のリングで小橋自身が復帰戦のカード(小橋・高山善廣組vs.三沢光晴・秋山準組)を発表すると流れがさらに加速、これまでプロレスに関心のなかった一般のファンからの問い合わせも殺到したという。

 確かに衝撃的なことだ。筆者の知る限り、内臓を摘出してリングに戻ってきた選手はいない。7月にスポーツ紙の仕事で2時間にわたるインタビューをしたが、「オレ、気持ちが折れなかったのはプロレスがあったからですよ」。この言葉を2度繰り返され、思わず目頭が熱くなってしまった。「もう、どうにもならんね。当日、立見席を多少は用意するけど、武道館とも相談しないと」と、永源部長は嬉しい悲鳴を上げていた。武道館の収容人員は約1万4500人。立ち見が出るのは、やはり小橋が両ヒザ手術からカムバックして迎えた'03年3月、武道館大会(三沢を破ってGHCヘビー級王座を奪取)以来という。当時は1万6700人の観衆が詰めかけたが、今回はどれだけの数字になるか。観客動員の面でも注目される'07年の最終戦だ。

 しかし、このフィーバーを手放しで喜べないのが、今のプロレス界。小橋復帰がここまで人気を集めるのは、強いチャンピオンがいかに待ち望まれているかということの表れだ。他団体を見渡しても絶対的なエースが存在せず、そのストレスが反動となって現れたのがこのフィーバーの正体だろう。各団体、トップ選手は軒並み高年齢。新日本は棚橋弘至、中邑真輔、後藤洋央紀らの台頭で世代交代が進んでいるものの、かつての勢いはない。小橋の復帰がプロレス界への問題提起になっている。

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