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バックパス禁止令は本当に必要か? 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2008/12/04 00:41

 そこまで日本人はサッカーを知らないのか。あまりに馬鹿げた質問をぶつけたためか、ドイツ人からそんな対応を受けてしまった。

 日本サッカー協会の犬飼基昭会長がバックパス禁止を検討中──という記事が一部のスポーツ紙で報じられた。ドイツの育成年代の試合では、バックパスをした選手を交代させるよう協会が通達していて、それを参考にするというのだ。

 筆者は在独5年になるが、そんなルールは聞いたことがない。本当にドイツではバックパス禁止なのだろうか?

 ドイツサッカー協会の育成担当アンドレアス・シュビムは失笑しながら答えた。

 「私たちは前に速い攻めを目指すというコンセプトは通達しています。しかし、バックパスは禁止していません。だって、そんなことは不可能でしょう?」

 現場の指導者からも笑われた。アイントラハト・フランクフルトの育成責任者アーミン・クラーツは言う。

 「協会から攻撃サッカーを目指すという大きなコンセプトは通達されていますが、細かいことは各チームが自由に決めていい。バックパス禁止なんて論外です」

 ここで問題視したいのは、全体のサッカー像が明確になってないのに、細かいルールだけを取り入れようとする姿勢だ。

 縦に速いサッカーを目指すのであれば、バックパスは少ないほうが良い。今季ブンデスリーガで大躍進中のホッフェンハイムは、幅15m×縦90mの細長いピッチを用意し、バックパスを制限して攻撃の練習をしている。これにより全員に縦方向にパスコースを作る意識が生まれる。

 だが、ポゼッションを重視するのであれば、事情は異なってくる。たとえばヘルタ・ベルリンのファブレ監督は、GKへのバックパスの練習を取り入れている。

 「今年のユーロでオランダ代表は、1試合約30回はバックパスしていた。前が詰まっていたら、無理に縦に急がず、ボールキープを優先すべき」

 第13節終了時点でホッフェンハイムは2位、ヘルタは4位につけている。どちらのやり方が正しいということはない。両方できるのが理想だが、未成熟のチームにそれを求めるのは高望みだろう。

 コンセプトなしに育成法だけ寄せ集めても意味はない。計画性のない思いつきを現場に強要するのは、もっと良くない。

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