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休養効果を存分に発揮。室伏広治の再始動。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2006/06/22 00:00

 陸上男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)が、昨年6月の日本選手権以来、約1年ぶりに復活した。

 5月29日にチェコで行われたゴールデン・スパイク大会を79m82で制し、続く6月5日のプラハ国際も79m57で優勝した。84m86の自己ベスト(日本記録)と比べると記録的には物足りないが、'00年シドニー五輪金メダルのジオルコフスキ(ポーランド)や'04年アテネ五輪2位で世界王者のチホン(ベラルーシ)、'05年世界選手権2位のデビャトフスキー(ベラルーシ)ら強豪が揃った中での優勝は、室伏の存在感を示すのには十分だった。

 昨季は日本選手権に出場しただけ。左脇腹痛で、世界選手権も欠場を余儀なくされた。“長年の競技生活で体が金属疲労を起こしていた”ことに気が付いた室伏は、この機会に競技会から離れて休養することを決断した。周囲には勘が鈍ることを心配する声もあったが、室伏は「このまま強引に続けていく事は決して自分のためにならない」と判断して信念を貫き通した。

 休養とはいっても、基礎的な練習は続けた。ただし、その中身を大幅に変更。たとえば筋力トレーニングの時にハンマーを腰に付けて回転したり、使用するバーベルにもハンマーをぶら下げたりと、あらゆる動作にハンマーを結びつけたのだ。「筋力を鍛えるというより感覚を磨く」ことが目的で、アテネ五輪までは回数や数値を目標にしていたスクワットなども、個々の筋肉をより専門的に鍛えることに重点を置くようにした。

 また、コーチも替えた。昨年11月に契約したトーレ・グスタフソン氏はコンディショニングの専門家で、コーチというよりはむしろトレーナーに近い。すでに競技者として最大の目標である五輪の金メダルを手にした以上、更に上を目指すには今までと同じことをやっていたのでは難しい。室伏の言葉を借りれば「(今まで眠っていた)自分自身の可能性をいかにして目覚めさせるか」にすべてがかかっている。1年間の休養は、そのための準備期間だったと言っていい。

 今回の連勝は、長期休養という選択が正しかったことを証明した。「正しい方向へ行っているということ。これを更に磨いていきたい」という室伏の今後が大いに楽しみだ。

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