SCORE CARDBACK NUMBER

千秋楽で吹き飛んだ横綱と大関の重み。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2007/04/19 00:00

 今年の春場所は、何とも後味の悪い、期待外れの幕引きで終わった。

 荒れる春場所を絵に描いたように、初日早々、3大関に続き横綱朝青龍までもが黒星発進。俊敏さが売り物の横綱が、土俵中央で時天空に後ろをつかれる大失態を演じて送り倒された。先場所後に起こった一連の騒動が尾を引いているわけでも無かろうが、上体にばかり力が入って足が流れ、下半身の軽さが目立った。いつもならば翌日には必ず軌道修正してくる横綱が、まさかの連敗を喫した。顔面にヒットした雅山の強烈な突きを褒めるべき取組だろうが、朝青龍らしい粘りや闘志が見られない。異常事態に連日座布団の嵐が舞う体育館。朝青龍が横綱になって、初めて経験する絶体絶命の状況。3日目の土俵でもしも負ければ……。

 しかし、ここから朝青龍の逆襲が始まった。普天王を完璧な相撲で倒すと、史上初の初日、2日目の連敗からの逆転優勝に向け、白星を積み重ねていく。

 迎えた14日目は、1敗で優勝争いのトップを走る大関白鵬との直接対決。白鵬の張り差しで浅い両差しを許す苦しい体勢も、左からの首投げでいなし、間髪入れずに引き落とし。「張られて一瞬ムカついた」。朝青龍の眠っていた闘争本能が、電光石火の逆転劇を生んだ。遂に千秋楽、横綱がいつもの指定席に座った。

 結び前の取組で白鵬が勝ち、白星が朝青龍の優勝決定戦の条件となった。ここからの2番は、久々に盛り上がった本場所の集大成の取組。相撲ファンの熱い視線が注がれる中、珍事は起こった。

 白鵬の見上げる土俵上、まず朝青龍が大関千代大海の突進を避けて変化。万全でない肘のためか、決定戦に備えて体力温存のためか定かではないが、これまでの12個の白星の価値を曇らす13個目の白星。朝青龍が今場所必死になって支え続けた横綱の重みが、一瞬にして吹っ飛んだ。そして、決定戦。今度は事もあろうに白鵬が朝青龍に見習っての注文相撲。思わず苦笑いを浮かべた朝青龍だったが、手に汗握る力相撲を期待したファンを無視した余りにもお粗末で中身のない相撲に、正直、私は失望した。

 確かに星は白か黒の2つのみである。しかし、実は輝く白星と輝かない白星、輝く黒星と輝かない黒星の4つがあると私は思うのだが……。

ページトップ