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出戻りチャンドラーにみたNBAの苦しい経営事情。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2009/04/07 07:00

 今、目の前にあるものが、明日もそこにあるとは限らない。ニューオリンズを本拠地とするホーネッツの選手たちが4年前のハリケーン・カトリーナ襲来のときに痛感したことだ。

 ハリケーンと比べることでもないが、2月のタイソン・チャンドラーのトレードも、ホーネッツの面々にとっては突然で、衝撃のニュースだった。昨季、シーズン最後まで西カンファレンス首位争いをし、プレイオフでもあと1勝で西カンファレンス決勝に進むまで躍進したホーネッツは、今シーズンも優勝候補にあげられている有望チームだ。その躍進の立役者の一人で、人気選手のチャンドラーがトレードで放出されたのだ。

「トレードの噂はあったけれど、実際にチームを離れることになるとは思ってもいなかった」とチャンドラーは言う。

 フロントは戦力面でのトレードだったと説明したが、経費削減のためのトレードだったことは誰の目にも明らかだった。世界不況の影響は、確実にNBAチームにも及んでいた。目の前に優勝が見えていても、経営のために戦力を削らなくてはいけないことがある。その現実を突きつけられたのだ。

ホーネッツ、最後のチャンスとなるか?

 幸いなことに、チャンドラーはすぐにホーネッツに舞い戻ってきた。2年前に手術を受けた左足親指が将来的に悪化する可能性を懸念してトレード先のオクラホマシティ・サンダーがトレードを無効としたのだ。チャンドラーをはじめホーネッツの選手たちにとっては、失ったと思ったチャンスが再び戻ってきた。

 とはいえ、手放しで喜ぶわけにもいかない。経営面の問題が解決したわけではなく、夏になればまたトレード話が浮上する可能性が高いのだ。しかし、今は先のことを心配するときではない。3月22日現在ホーネッツは44勝25敗、西カンファレンス2位争いの真只中にある。

「この特別なチームを(フロントは)壊そうとした。そう思うだけで、さらに一生懸命プレーしなくてはいけないという気持ちになる」とチャンドラーは言う。

 トレードが中止となった後、ホーネッツのバイロン・スコット・ヘッドコーチはチャンドラーにこう言ったという。

「これはきっと、君にはまだニューオリンズでやるべき仕事が残っているということに違いない」

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