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プレーオフへ向かって、“超特急”は止まらない。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2006/08/31 00:00

プレーオフへ向かって、“超特急”は止まらない。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 今年初の紅白戦、最初の2打席で慎重にボールを見極めて四球を選んだ。それが大ブレークの兆候だったのかもしれない。2つ目を選んだとき、ネット裏に陣取っていたメッツ番記者からは驚きの声さえ上がった。ホセ・レイエスは、きたボールは何でも振ってしまう典型的なフリースインガー。昨年、161試合に出場しながら、わずか27四球。抜群のスピードで60盗塁、初の盗塁王に輝いたものの、出塁率.300は1番打者として合格には程遠いものであった。

 「今年の目標はとにかく塁に出て、できるだけホームにかえって、勝利に貢献すること」

 試合後、番記者にその変身ぶりを問われたレイエスは、持ち前の明るさを振りまきながら語ったものである。

 そして、半年が過ぎたいま、四球だけでなく、あらゆる部門で自己ベストを上回るペースで大活躍を続けている。8月12日現在、打率.297、11HR、 55打点、39四球、出塁率.352。俊足を生かしての49盗塁、15三塁打はいずれもリーグトップ。こうした記録面だけでなく、常に全力を尽くす情熱的なプレーぶりで人気も急上昇。実際、オールスターにもファン投票で初めて選ばれた。

 「リッキーにコーチしてもらったことが、とても役に立っている。塁に出たときのスタートを切るタイミング、打つ方ではツーストライクに追い込まれた際のアプローチなど、学ぶことがたくさんあった」

 レイエスの言うリッキーとは、球団が英才教育にスプリングトレーニング終盤と7月上旬の2度にわたって臨時コーチとして招いた、1406盗塁の大記録を持つリッキー・ヘンダーソンのことだ。世界の盗塁王であるばかりでなく、バリー・ボンズに抜かれるまで、2190個の四球を選んだ四球王でもある。

 「もう悪球には手を出さないよ。アグレッシブさを保ちながら、もっとじっくりボールを見極めるようになりたい」

 “世界一”のコーチを得て、ますます成長を見せているレイエスは言う。打撃同様に遊撃の守備でもアップテンポの進化を遂げる彼に対して球団は、その期待の大きさを示すように4年2325万ドルで契約を延長。ナ・リーグ東部地区を独走するメッツの核弾頭は、ますます自信を深めて「10月決戦」へ向かって突っ走る。

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