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アジアカップの優勝よりも大切なこと。 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byMichi Ishijima

posted2004/08/26 00:00

アジアカップの優勝よりも大切なこと。<Number Web> photograph by Michi Ishijima

 4―3―3に始まり4―2―4、4―4―2、3―5―2、3―4―3、3―6―1に4―5―1、5―3―2……。布陣は3分割表記でもざっと8通りある。4分割で表現すれば、数は倍増する。ベンチに控えている選手の数より「選択肢」は多い。だから僕は、敢えて「サッカーはシステム(=布陣)だ」と言いたい。

 監督がスタメン以外に、布陣までも決定できる数少ない球技。それがサッカーの特徴だ。野球は内野と外野の数を変えられないし、15人のラグビーも一定。バスケットには選択肢があるにはあるが、選手が5人しかいないので、数は少ない。サッカーを俯瞰(ふかん)で捉えれば、特異性は途端に鮮明になる。

 アジア杯を伝えるTVには、そのことへの言及がほとんどなかった。いま、投入すべき交替選手について論じるより、「三都主、加地には何とか頑張って欲しい」と叫ぶより、交替枠以上に選択肢がある布陣について論じた方が、サッカーらしいし、建設的だ。

 ポルトガル代表のスコラーリ監督は、ユーロ2004のイングランド戦で、布陣を4度変更した。選手も3人替えた。最初と最後でチームは別もののように変化した。ブリュックナー(チェコ代表監督)、アドフォカート(オランダ代表監督)もしかり。布陣の変更は、選手交替以上に大きな影響をもたらした。

 アジア杯をユーロ2004のアジア版と宣伝するのなら、TV局にもそれを踏まえた相対的な視点が欲しい。ジーコが布陣を変更する可能性は低い、と思っていたら、タイ戦では後半から3―4―1―2を4―2―3―1っぽい布陣に変えている。一瞬、ユーロ2004ぽかったわけだが、TV局はその意味について詳しくは触れなかった。

 「この後、W杯予選も残っていますが……」。優勝後のインタビューで、某選手に向けられた質問にも俯瞰の視点が欠けていた。残っているんじゃなくて、こっちこそが本番。アジア杯より1000倍も1万倍も重要です。それを考えると、優勝の感激と同じくらい10月のオマーン戦が心配になる。ここで負ければ、独W杯は恐らくアウト。日本サッカー産業は倒産の危機に瀕す。アジア杯で最も苦戦した相手に、日本の3―4―1―2は全く機能しなかった。三都主、加地は無理を強いられた。サッカーは布陣、戦術以外の何ものでもない。

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