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芝のグラウンドで日本サッカーは変わる。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2009/03/26 08:00

 今年2月、筆者は計6年半の欧州暮らしに区切りをつけ、日本に本帰国した。オランダ、ドイツと移り住み、サッカーの本場のニオイはもちろん、貪欲なスポーツジャーナリズムに触れられたと思っている。

 日本に帰ってきて今一番強く感じているのは、「やっぱり芝生は大事」ということだ。

 欧州でサッカーを見ていると、日本と欧州にはゴール前の動きに決定的な差があることに気がつく。FWがクロスに飛び込むとき、日本ではファーストチョイスが「ニアポスト」なのに対して、欧州では「ファーポスト」なのだ。

 理論的にはファーのほうが得点になる確率が高い。DFの視野から消えて、クロスに合わせることができるからだ。一方ニアだと、DFがボールとFWを同時に視野に収められるので守りやすい。

 なのにJリーグでは、クロスを上げるほうも、飛び込むFWも、近いエリアばかり狙う。それが不思議で仕方なく、もっと遠いほうのポストを狙えばいいのにと、もどかしく思っていた。

 その疑問を帰国直前、ある指導者にぶつけたところ、実に明快な答えが返ってきた。かつて神戸弘陵高校やLリーグのTASAKIを率い、現在、関西学院高等部の監督を務める山根誠教諭だ。53歳にしてドイツに1年間留学することを決意した熱血漢で、フランクフルトの練習場で出会った。山根教諭は言う。

「たしかに高校年代では、ニアを狙うように指導する傾向があるかもしれません。でも、それは仕方ないこと。日本の場合、ピッチは土が多い。芝に比べてイレギュラーしやすく、ファーにクロスを上げようとすると、ミスキックになる可能性が非常に高いんです。一方、ニアに強くボールを蹴れば、多少イレギュラーしても、クロスがぶれない。だから指導者は近いほうのポストを狙わせるんです」

 いくら技術が向上し、戦術の知識が深まっても、芝のピッチが増えなければ、永久に日本サッカーは強くならないのではないか。川淵三郎名誉会長が推し進めている「日本中に天然芝を」という運動が、最近取り上げられることが少なくなったように思う。筆者担当の最後となる当コラムでは、あらためて芝生の大切さを強調して締めくくりたい。

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