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ブルズを率いるローズが
新人らしからぬ理由。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2008/12/18 00:00

 火と水に分類するなら、デリック・ローズ(シカゴ・ブルズ)は間違いなく水だ。燃えたぎる火ではなく、静かに流れる水。試合中も感情を表に出すことはほとんどなく、会場中が総立ちになって沸くほどのビッグ・プレーを決めた後でも、まるで練習で簡単なレイアップを決めた後のように無表情のままだ。まるで、まわりから感情を読まれることを拒否しているかのようでもある。

 1988年生まれの20歳。今年6月のNBAドラフトでブルズから1位指名を受けたばかりだ。新人ポイントガードがチームの舵を取るのは難しいはずなのだが、開幕戦から全試合に先発出場し、まるで10年のベテラン選手のように落ち着いたプレーでチームを率いている。スピードとパワーを兼ね備え、味方へのパスだけでなく、必要だと見れば自分で相手の隙をついて攻めることもできる。今季の新人王最有力候補であるとともに、近い将来のオールスター候補でもある。

 ローズは自らのシーズン序盤を「自分でもけっこうやれていると思う」と振り返る。淡々とした口調は、まるで誰かほかの選手のことを話しているかのようでもある。「NBAに慣れるのにもう少し時間がかかると思っていた。これだけできているのは、コーチやベテラン選手たちが教えてくれるおかげだと思う」

 こうして、まわりの年配者たちを立てることを忘れないのは、ずっと兄たちに助けられて育ってきたからだろうか。ローズが育ったシカゴのサウスサイドは殺人事件が頻繁に起きる危険な地区なのだが、現在37歳の兄を筆頭に、33歳、27歳と年が離れた3人の兄たちが常に守ってくれたおかげで、危険に巻き込まれることも、問題を起こすこともなく、好きなバスケットボールに打ち込むことができたのだという。

 それにしても、シカゴが地元出身のローズにかける期待は大きい。生まれ育ったホームタウンでの期待は時としてプレッシャーとなる。それで潰れていく選手も少なくないのだが、ローズはまったく動じる様子もない。

 「プレッシャーがかかるのは好きだ。プレッシャーがないことのほうが心配なくらいだ」とローズは言う。

 どうやら、静かに見える水の底には、誰よりも熱いマグマが潜んでいるようだ。

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