SCORE CARDBACK NUMBER

メッツが手放した逸材、カズミアの輝ける未来。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2004/10/07 00:00

メッツが手放した逸材、カズミアの輝ける未来。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 最速96マイルのファストボールと切れ味鋭いスライダーが、ビシビシと決まる。スコット・カズミアは6回までに、リーグ最強といわれるレッドソックス打線を3安打無失点に抑え、しかも9三振を奪ってマウンドを降りた。

 「なんか現実感がないよ。相手がペドロ(マルチネス)で、満員のフェンウェイパーク。打席に立つのはオールスターに出てくる打者ばかり。そんな相手に勝っちゃったんだから」 と、メジャー5試合目で2勝目をマークした20歳のルーキーは、私服に着替えたあとも声を上ずらせながらその喜びを語った。

 2年前、ドラフト1巡目でメッツに指名されたときから大器と騒がれていた逸材である。実際、メッツは将来のエース候補として大事に育てるつもりで、大物の交換トレードの相手に指名されても断り続けてきた。ところが7月のトレード期限ギリギリでその方針を大転換させたのだ。予想外の善戦で首位争いに加わっていたメッツは、先発投手陣を充実させるため、デビルレイズのビクター・ザンブラーノとのトレードを成立させたのである。

 「通告を受けたときはショックだった。本当に大ショックで、落ち込んでしまった。メッツはずっと出さないといっていたからね」

 シングルAで開幕を迎え、順調にダブルAに昇格した。ロースター枠が拡大される9月にはメジャーデビューするチャンスがあるかもしれない、とカズミアは考えていたのだ。トレードは「メジャーで通用するまでに2年はかかる」というリック・ピーターソン投手コーチの意見が決め手になったといわれる。

 「人にはさまざまな意見があるからね。僕は気にしていないよ。そういわれたことは過去のことさ」と、前夜お祝いの電話攻勢で2時間しか眠れなかったというカズミアは軽く受け流した。

 球団発表では身長183cmだが、どうみても5cmは低い。その小柄な体も、投球フォームも時速100マイルを計時するフィリーズのクローザー、ビリー・ワグナーに似ている。だが「目指すのは同じテキサス出身のノーラン・ライアンとロジャー・クレメンス」だ。

 ノーコン病が治るのを待ちきれずに若き日のライアンを放出する大失敗を犯したメッツは、30年余りたった今また、同じ過ちを繰り返したのかもしれない。

ページトップ