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伊達の復帰戦勝利を手放しで喜べない。 

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吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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posted2008/05/15 00:00

 少し残念な結果が重なった。世界グループ復帰をかけた女子テニス国別対抗戦フェド杯で、日本はフランスに完敗。同じ日に、岐阜で行われたツアー下部のカンガルーカップ予選1回戦で、昨年の高校総体ダブルスでベスト4に入った女子高生が、クルム伊達公子に敗れた。フェド杯は、現役プロ同士のガチンコ対決で、敗れたのは実力が及ばないから、というシンプルな出来事だ。

 しかし、カンガルーカップの結果は、多くのことを考えさせられた。クルム伊達は、'96年11月以来、約11年半ぶりのシングルス国際公式戦出場だった。クルム伊達は、再び公式戦に出場するに当たって「世界を目指すわけではない。そんな甘い世界ではない。世界ランクのことは考えていない」と話した。そしてコートに立つ理由を「若手に少しでも刺激を与えたい」と説明した。

 11年半のブランクがある選手が、若手の壁になること自体が、おかしなことである。テニスの技術は日進月歩。10年前のレベルでは、クルム伊達が語っているように、世界の舞台では戦えない。しかし、その彼女が、いくら半年におよぶ厳しいトレーニングを積んだとはいえ、現役女子高生に勝ってしまったのだ。クルム伊達は、続く予選2回戦では昨年のインカレ準優勝者、決勝ではJTAランキング27位の大学生を破って本戦出場を決めた。

 彼女たちは、レベルの違いはあれ、いつかは4大大会出場を夢見ているはずだ。カンガルーカップのはるか先が、ウィンブルドンのセンターコートにつながっていると信じていると思う。クルム伊達が休んでいた11年半、彼女たちの努力してきたことは何だったのか。もちろん、ジュニアの女子高生たちに、それを求めるのは酷だということは分かっている。しかし、クルム伊達は「杉山(愛)、森上(亜希子)、中村(藍子)は別格。でも国内の選手とは、そんなにレベルは違わない」とまで言っている。いくら元世界4位とはいえ、長いブランクを持つ37歳の選手に、そのように言い切られる現役選手たちは、あまりにも情けないと言わざるを得ない。

 原稿締切時点で、クルム伊達の快進撃は続いている。しかし、この事態は彼女が本当に希望していたことなのだろうか。

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