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弱小ブリュワーズをひっぱる韋駄天男。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2004/06/17 00:00

弱小ブリュワーズをひっぱる韋駄天男。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 今年のペナントレースで特徴的なのは、"万年Bクラス"チームの健闘が目につくことだ。ブリュワーズもそのひとつ。11年連続でシーズンを負け越しているチームが順調な滑り出しをみせ、5月30日現在で25勝23敗。順位は5位ながらも、激しい星のつぶし合いで、首位まで3ゲームという僅差で食らいついている。

 好調の原因はオフに敢行した大型トレードの成果、投手陣の充実などいくつも挙げられるが、その躍進のシンボルといえるのは1番打者として牽引役を果たすスコット・ポーセドニックだ。5月の不振で打率は・257(5月31日現在)に落としてしまったが、開幕から持ち前のスピードで走りまくり、球団記録を5個も更新する22連続盗塁を決めている。だが、28歳のポーセドニックは静かに語る。

「数ではなくて、チームの勝利に貢献できる価値の高い盗塁をしたい」

 高校時代はスプリンターとして鳴らした。100mを10秒36。「オリンピックを目指していたら、出場できたかもしれなかった」というほどの速さ。実際、テキサス大学など有力校から陸上選手として奨学金のオファーも舞い込んだ。

 しかし彼は'94年、ドラフト3巡目でレンジャーズに入団。打席から一塁まで3・6秒の快足はしかし、故障の連続でなかなか生かすことができなかった。昨年、新人として史上4人目の3割、100得点、40盗塁の大ブレイクを見せるまでは、9年間のプロ生活のほとんどをマイナーで過ごしていたのである。

「あの生活で学んだのは、常に準備を怠らないということ。肉体的にも精神的にもしっかりできていれば、満足のいくプレーができる」

 この日も、室内練習場で打ち込むために早出をしていた。試合直前には対戦する投手の投球フォームのクセを頭に叩き込むために、15分間ビデオをみる。それが習慣だ。

「ニューヨークみたいな大都市にいたら、彼は新人王をドントレイル・ウイリスに持っていかれることもなかったし、今ごろはスターの仲間入りをしていたはず」

 と、担当記者のトム・ハードリコートは悔しそうにいう。

 苦労人の韋駄天男は、敗戦の歴史を繰り返す影の薄いチームにキラキラとした輝きをもたらすことができるだろうか。

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