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日本テニス協会の、意義ある物言い。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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photograph byHiromasa Mano

posted2007/01/11 00:00

日本テニス協会の、意義ある物言い。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 今年、日本テニス協会(JTA)が国際テニス連盟(ITF)に対し提案を行った。8月に開催されたITF年次総会で、JTAは男女国別対抗戦のデビスカップ(デ杯)、フェドカップ(フェド杯)を世界選手権やW杯に名称変更し、さらに1会場での集中開催、2年ごとの交互開催にすることを申し入れたのだ。

 ホーム&アウエー方式のデ杯、フェド杯を自国開催した場合、現在、JTAはデ杯で約500万円、フェド杯で約1000万円の年間赤字を抱える。ITFからの援助は選手への賞金と広告収入の分配金のみ。利益を出すためには、各協会が独自に集められるスポンサーと集客に期待する以外に道はない。

 名称を分かりやすくし、認知度を高めてスポンサーを募るという図式は安直ではある。まずは自助努力だが、財政難の現状で背に腹は替えられない案なのだろう。集中開催も、各国の負担、日程過密の問題を解決するには良い案だ。フェド杯は'94年まで、1週間の1会場開催だった。

 JTAの平成17年度の収入は約12億円だが、黒字は約3500万円とわずかだ。支出で最も多いのは競技会事業費(大会運営費)で、17大会で約7億円。その内、デ杯、フェド杯計3大会の自国開催で約5500万円の経費がかかっている。JTAは財団法人であり、営利を目的とすることはできない。傘下にある日本体育協会から脱退し、民営になればいいという話もあるが、民営で12億円の収入はとうてい見込めない。米国テニス協会もJTAと同じ非営利団体だが、年間予算は約2億ドル(約230億円)に上る。

 JTAの提案は、100年以上の歴史を誇る大会の根幹を揺るがすものだった。渡辺康二専務理事は「総会では『採択はできないが、考える余地はある』とあしらわれた」と笑う。金銭的にも意識の点でも、世界のテニス大国と日本の現状の温度差はいかんともしがたい。

 名称変更はともかく、1会場集中開催とデ杯、フェド杯の交互開催は、検討に値する。ITFに加盟する203の国と地域の協会は、大半が日本と同じ悩みを抱えているものの、ITFの機嫌を窺い発言を控えている。何も世界に右へならえするのが国際化ではない。反発覚悟で訴えたJTAの発言こそが大事だったのではないだろうか。

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