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怪我に泣いたトーマスが、雪辱へ向け、突き進む。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2006/09/28 00:00

怪我に泣いたトーマスが、雪辱へ向け、突き進む。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 タイガースが今季のチームのサプライズだとしたら、個人ではフランク・トーマスだろう。ホワイトソックスの構想から外れ、アスレチックスへ。年俸保証50万ドル、インセンティブを含めても最高で310万ドルの1年契約。一時は保証額の20倍近くの年俸を稼ぎ出していただけに、屈辱的な移籍を経験したと言える。それが9月12日現在で、DHとして打率.283、36ホーマー、98打点をマーク、見事な復活を遂げた。

 「昨季までの2年はほとんど欠場していたようなもの」と本人がいうように、左足首骨折を繰り返して2年間の出場は108試合のみ。特に、昨季は16年間一筋でスーパースターとしてプレーしてきたホワイトソックスが88年ぶりのワールドシリーズ優勝を果たしたというのに、その瞬間をベンチで眺める寂しさを味わった。怪我の具合が完治からほど遠く、ギブスが外されていなかったからだ。

 「優勝はうれしいさ。でも、やっぱりフィールド上で、みんなと一緒に迎えるのが、最高さ」

 アストロズに王手をかけた第4戦の試合前、トーマスは笑顔を浮かべてはいたが、心の底からこみ上げているものとは思えなかった。

 そんな彼のニックネームは破壊者を意味する、ビッグハート。'93年、'94年と2年連続でMVPを獲得するなど、196cm、120kgを超える巨体を生かした豪快なスイングで、主砲としてチームを支えていた男に、相応しいネーミングだ。

 怪我を克服し、それを改めて証明したのが、移籍後初めてシカゴに登場した5月22日だった。スタンドには、『ありがとう、フランク』、『お帰り、ビッグハート』と書かれたプラカードが溢れていた。そして、トーマスは打席に立つたびに繰り返されるスタンディングオベーションへの返礼でもするように、第1打席と第3打席にレフトへ強烈なホームランを叩き込んだ。普通なら相手チームのホームランには無視するか、ブーイングをするスタンドも、この2発には大歓声を上げたのである。

 「もう一度、やれることを証明したかった。そして、自分がチームに貢献して優勝を勝ち取りたかった」と、カムバックの動機を語る38歳のトーマス。まず、第一の難関、地区制覇は目前だ。

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