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今、「賞金ファイト」が流行する理由。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2005/11/24 00:00

 太古の時代、ボクシングはプライズ・ファイトと呼ばれた。文字通り「賞金試合」である。

 今でこそボクサーの報酬額は勝敗に関係なく予め決められているが、プライズ・ファイトの一時期には、ウィナー・テイク・オール方式(勝った者がみなもらう)が当たり前で、はるかにギャンブル性の高い競技だったのである。

 ボクシングほど苛酷で敗者が惨めな思いを味わう競技はない。ジャック・ロンドンの小説に、貧しいファイターがすきっ腹で試合をし、負けたために一銭ももらえず、徒歩で帰途につくという、読んでいて飢餓感が募ってくる短編もあった。いつしか勝者にも敗者にも決められたファイトマネーを支払うのが主流となったが、その後も報酬とは別に勝者に賞金を提供する試合は行われてきた。

 時は移ろい、新手の「賞金ファイト」が話題になっている。この欄でもご紹介したエドウィン・バレロは16連続1回KO記録を達成して100万円をゲットしたが、11月19日に決勝を迎える「ビー・タイト大会」は優勝200万円というボクシングでは高額の賞金が魅力だ。10回戦を戦えるA級ライセンス所持者に、あえて4回戦という短期決戦でKO決着を煽る。A級・B級選手を対象とした協会主催の賞金トーナメントは20年前から開催されてきたが、単にトーナメントを勝ち抜けばもらえる賞金とは別に、KO勝ち、それも早い回で倒すほど増額される「KO賞」を用意。これは馬の鼻先にぶら下げられたニンジンだ。昨年の第1回大会では真鍋圭太、日高和彦というスターを生んだが、今回はどうか。

 こうした趣向が最近の総合格闘技人気の影響を受けたものであることは、主催者も否定しない。「ボクシングをもっと盛り上げたい。打ち合いやKOがないと、K―1の人気に勝てないからね」(ビー・タイトの仕掛け人・瀬端幸男氏)。期待したほどKOは増えないものの、試合内容は好評だ。何より、噛み合わない試合でも退屈する間もなく終わるのがいい。

 これに触発されたか、渡嘉敷勝男さんが「モンスターズ」という新手の賞金マッチを企画。こちらは海外から怪物的な選手を呼び、ブロードバンドで映像を配信するという。ボクシング界もあの手この手と考えているのである。

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