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今のプロレスとかけて、ピアノと解く。その心は? 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

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posted2005/03/31 00:00

 3月1日、ピアノコンサートに出かけた。いつもの私の“仕事場”である日本武道館に、フジ子・ヘミングが奏でる「ラ・カンパネラ」が流れる――。

 1万人を超える聴衆とともに、年甲斐もなく心ときめくひと時を過ごさせてもらった。よかったねえ。嬉しくなった。演奏を終えたピアニストは拍手のウエーブに応え、スキップするような足取りで花道を走っていた、あのフジ子さんが。驚いた、笑った、酔った。

 まるでリングにみる観客と勝利者が一体となった歓喜のシーンと同じであった。

 啓蟄の5日、また武道館を訪れた。ノアの絶対王者は絶対ではなかった。力皇猛が27分11秒、必殺の無双(ブレーンバスターの変形技)で小橋建太のV14を阻み、第7代GHCヘビー級王者になった試合である。

 力皇は大相撲から転向して6年目、3度の挑戦で初戴冠。現役時の四股名(力櫻)通り満願の春だ。鳴戸親方(元横綱・隆の里)との確執で廃業したと聞くが、貴乃花、若乃花、武双山(藤島親方)、魁皇らとは気のおけない同士。折りから春場所。現役はただ一人魁皇だけ。今回の“金星”はカド番大関の親友に対しての「優勝しかない。互いに頑張ろう」というエールだったのかも知れない。試合後に泣きじゃくったその心情は痛いほどわかる。

 しかし、力皇のこれからは大変だ。彼の魅力はがむしゃらさとパワー。攻めの姿勢を失ったら格上の挑戦者群から狙い撃ちされる。タッグのパートナーだった巨漢・森嶋猛も腕をあげた。返り咲きを狙う秋山準、トップの三沢光晴もいる。大相撲対決の天龍戦もありえる。脳梗塞で長期欠場のノーフィアー高山善廣の復帰も近い。力皇の命運は、初防衛戦が予定される4・24武道館で決まる。

 今年の序盤戦を振り返ってみると、3冠王川田利明、そして小橋の相次ぐ王座転落で昭和世代のチャンピオンが姿を消した。全日本マットに風穴を開けた4冠王小島聡は年号が平成になってからデビューした選手。その小島と同期の前IWGP王者・天山広吉、新日本のエース候補・中邑真輔、棚橋弘至らが続く。3団体は平成育ちが主流を占め、昭和世代は完全に制圧された形だ。

 間違いなく、ピアノの鍵盤が弾むがごとくマットに新時代の風が吹き始めている。武道館を囲む北の丸公園の染井吉野の開花も近い。

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