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沖縄キャンプで王座奪還なるか。 

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前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byMakoto Maeda

posted2008/05/01 00:00

沖縄キャンプで王座奪還なるか。<Number Web> photograph by Makoto Maeda

 4月の沖縄の海に巨体を浮かべ、ニコライ・ワルーエフはのびのびと水泳を楽しんでいた。ロシア人初の世界ヘビー級王者は身長213cm、体重145kg。この数字は歴代世界チャンピオンの誰をも凌ぐ。

 現在無冠だが、5月末に王座奪還を狙って現王者ルスラン・チャガエフにリベンジ戦を挑む。このため約3週間、沖縄・宜野湾でトレーニングを続けた。昨年、新たな参謀として迎えたアレクサンドル・ジミン・トレーナー(協栄ジム所属)が、試合の近いサーシャ・バクティンをみていたため、ワルーエフはわざわざ来日し、合同キャンプに参加したのである。

 超ヘビー級の巨人ボクサーというと、すぐに連想されるのはプリモ・カルネラの悲劇。バッド・シュルバーグがカルネラをモデルに「巨人は激しく倒れる」を書いたが、マフィアに食い物にされる魯鈍の巨人ボクサーは哀れだった。

 しかし、ワルーエフはカルネラとは異なる。「動くアルプス」と呼ばれたカルネラ(196cm、120kg)よりはるかに大柄ながら、この巨体でこれほど速く動くボクサーを他に知らない。サイズだけではない。決定的に違うのは、ワルーエフが自分の意思により行動することだ。昨年、デビュー47戦目にして初黒星を喫し世界王座から転落すると、トレーナーを解雇し、旧知のジミン氏に新参謀を依頼した。同じサンクトペテルブルク出身。旧ソ連国家代表チームのコーチからプロに転じ、勇利とナザロフを世界王座に導いた腕を見込んだのである。

 再起後は2連勝。特に2月の「挑戦者決定戦」で元王者リアコビッチに完勝した一戦は、ジミン・トレーナーの株を一気に上げることになった。巨体に頼る戦法からジャブを多用したボクシングに変わり、技術的改良が明らかだったからだ。

 ヘビー級は、目減りしたとはいえ、今でも大きなビジネス。5月の試合報酬は、挑戦者ゆえに「たった」100万ドルだが、勝てばその後さらに何倍にも膨れ上がる。前戦は小柄ですばしっこいチャガエフにしてやられ接戦を落としたが、今回はどうか。ジミン氏は「勝つチャンスはある」と慎重な言い回しながらも、巨人王者の復活に期待を寄せる。勝敗とは別に、ワルーエフの変貌ぶりも楽しめそうである。

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