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KIDを五輪に導いた
山本家の熱い“血”。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2006/08/17 00:00

KIDを五輪に導いた山本家の熱い“血”。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 総合格闘技イベント「HERO'S」で活躍中の山本“KID”徳郁(KILLER BEE)がレスリングにUターン。フリースタイル60kg級で北京五輪を目指すことになった。もともとKIDはミュンヘン五輪日本代表の郁栄氏を父に持ち、姉・美憂さんと妹・聖子さんはともに元世界王者というレスリング一家に生まれ育ったサラブレッド。KID自身は学生時代に全日本レスリング選手権で2位になったのが最高位で、大学卒業後は総合格闘家としての活動に専念していた。

 その後の活躍はいわずもがな。5月3日、レスリングではKIDより実績が上(シドニー五輪代表)の宮田和幸(フリー)を飛びヒザ二段蹴りで秒殺KOしたことは記憶に新しい。プロとして人気絶頂の時期に、なぜ出場できる保証もない五輪を目指すのか? そんな声も聞こえてきそうだが、理由はひとつ。KIDにとって五輪出場は「ガキの頃からの夢」だったからだ。7月22日、会見に臨んだKIDはいつになく饒舌だった。

 「(年齢的に29歳の)今が最後のチャンス。ここでトライしなかったら、一生悔いが残ると思ったんですよ」

 追い風も吹く。大学生だった時と比べると、現在は1ピリオド=2分と試合時間が1分も短い。短期決戦型のKIDにとって、これほど有利なルールはない。ただ、期待と現実は別。KIDとともに会見に出席した高田裕司氏(日本レスリング協会専務理事)は「今の力は(全日本)ベスト8くらい」と釘を刺した。

 それに北京までの道のりは険しい。行き方は何通りかあるが、基本的に国内外の大会とも勝ち続けていなければ、代表の権利を勝ち取ることはできない。高田氏が「ある意味、アマチュアの方がプロよりも厳しい」と指摘するのも頷かざるをえない。自信のほどを聞かれたKIDは「100%」と胸を叩いたが、片手間で達成できるものでないことはわかっている。総合をやりながら五輪も目指すという選択肢をとらなかったのはそのせいだろう。少なくとも、今後1年間はレスリングの活動に専念する予定だ。

 勝っても負けても話題になるプロ活動を休止してまで、あえて歩き始めた茨の道。レスリング一家の“血”が騒ぎ始めたら、もう誰も止められない。

■関連リンク► KIDの敗戦から見えた総合格闘技の現状とは。 (2009年6月12日)
► 最近、KIDが涙もろい理由。 (2005年3月3日)

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