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ヘビー級を活性化させる
米国復活の日は遠い。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph bySumio Yamada

posted2008/12/04 00:00

ヘビー級を活性化させる米国復活の日は遠い。<Number Web> photograph by Sumio Yamada

 先頃、沖縄・宜野湾市のリゾートホテルに滞在してトレーニングを続けていたニコライ・ワルーエフの取材に出かけた。WBA世界ヘビー級チャンピオン。身長214cm、体重145kgは歴代王者の誰をも凌ぐビッグサイズ。「別格」といわれるヘビー級でも、このロシア人はさらに別格の存在である。

 しかし、驚異的な巨体にもかかわらず、全盛時のタイソンやフォアマンが漂わせていた威圧感はない。自らの巨体を支えるのも容易ではなく、ジムワーク中の1分のインターバルでは必ず椅子に腰をおろす。ジミン・コーチは朝の練習でもランニングの代わりに水泳を勧めていた。

 いま主要4団体の世界ヘビー級王座の3つはウクライナのクリチコ兄弟の手にある。弟ウラジミールがIBFとWBO、兄ビタリは10月、4年ぶりに復帰していきなりWBC王者サミュエル・ピーターに圧勝し王座奪回。これで兄弟同時に世界ヘビー級王座に君臨するという史上例のない記録を達成した。彼らの野望はこれに留まらず、4王座を独占することにある。沖縄のワルーエフは「クリチコと戦いたい」と統一戦を希望していたが、兄弟どちらと対戦しても、まずロシアの巨人の不利は否めまい。

 ヘビー級といえば米国のお家芸だったが、魅力的な新星の台頭もない現在、4本のチャンピオンベルトの1本でも戻ってくるまでには、まだ時間がかかりそうだ。次に米国選手が世界ヘビー級王座を狙うのは12月20日、ワルーエフの挑戦者に選ばれたイベンダー・ホリフィールド。アリを抜いて4度の世界ヘビー級王座に就き、マイク・タイソンを2度負かした男も、すっかりトウの立った46歳。その経験でワルーエフをはぐらかす可能性も皆無ではないが、史上最高齢ヘビー級王者誕生の可能性はきわめて低い。

 アリ、フレージャー、フォアマンら、一時代を築いたヘビー級王者はみな五輪の金メダリストから転向してプロの頂点に立った。アマチュアの世界一からプロの世界一へという図式は、今も変わっていない(クリチコ弟はアトランタ五輪の金)。ただ問題は、米国がアマでも勝てなくなっていること。今年の北京大会を含め、直近の五輪6大会で米国は最重量級の金を逸している。ヘビー級沈滞の一端はここにも表れているわけだ。

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