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引退さえも囁かれたベテランが果たした役割。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2006/10/12 00:00

引退さえも囁かれたベテランが果たした役割。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 ヤンキースだけに流通する「MVPコイン」というものがあるのなら、表にデレク・ジーター、裏はバーニー・ウイリアムズの顔が描かれるのではないか。

 ペナントレースは終わってみれば大差でのゴールインとなったが、ヤンキースは8月に2位レッドソックスに5連勝して突き放すまで苦しい戦いの連続だった。特に、中盤まではケガ人続出で優勝を危ぶむ声もあった。そんな中で首位戦線にとどまっていられたのは、ヤンキース一筋16年目を迎えた38歳の献身的なプレーの賜物といっても過言ではない。

 ジョー・トーレ監督は、そのウイリアムズについて次のように語った。

 「彼の身体能力の高さを再認識すると同時に日々の努力に敬服する。あの年齢であんな難しい役割にチャレンジしてくれたのは驚きだ」

 実際、昨年まで中堅のレギュラーだったウイリアムズは、打線では3番、4番を除く全ての打順で打席に入り、守備でも'92年以来という右翼を含む外野の3ポジションをこなし、さらにDHで出場するなどオフェンス、ディフェンスの両面でユーティリティープレーヤーの役割を果たした。その日にならないと出番と役割がわからないという難しい状況でもきっちり結果を残してきた。しかも、ウイリアムズの場合は、体力的な衰えを指摘され、昨シーズン限りで引退を噂された選手でもあるのだ。

 「あのまま終わりたくなかった。で、控えに回ること、年俸を大幅に下げること(前年の約8分の1,150万ドル=推定)を条件に1年契約したんだ。だから、今年は僕の集大成のつもりでやってきた」

 そのウイリアムズが打席に立つたびに、ヤンキースタジアムには惜別の情が込められたような大きな拍手が起こる。

 「ファンの応援は凄く嬉しいけれど、今年で引退するって決めているわけじゃないよ(笑)。今は体がとても強くなっている感じがするんだ」という彼の髪の毛と無精ひげは驚くほど白くなったが、確かに動きは軽快だ。

 開幕したポストシーズンで、歴代トップの通算安打を記録しているのはジーター。そして、ウイリアムズが2位。この「MVPコイン」が一段と輝きを増せば、ヤンキース6年ぶりの王座奪回が現実となるはずだ。

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