SCORE CARDBACK NUMBER

若手ドライバーが示す、アメリカ参戦の意義。武藤英紀 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

posted2007/04/19 00:00

 予想外と言っては失礼だが、今年アメリカのインディ・プロシリーズに進出した武藤英紀が、開幕から大活躍を始めた。開幕戦から3位、2位、4位。ルーキーながらシリーズ3戦を終えた段階でランキング2位という快進撃である。

 と言っても何のことやらわからぬ方も少なくあるまい。現代日本のモータースポーツ界はどうしてもF1が開催されるヨーロッパを向いてしまい、アメリカのレースのことを忘れがちだ。

 ホンダの育成プログラムに所属し、F3、F・ニッポンと全日本選手権で経験を積んだ武藤も、ホンダから「今年はアメリカへ」という話を聞いたときには躊躇したという。若い選手たちの気持ちも、やはりヨーロッパを向いているのだ。

 特に武藤の場合、ホンダが申し出たのはアメリカのフォーミュラカーレースとしてはマイナーリーグにあたるインディ・プロというカテゴリーで、昨年まで彼が戦っていたF・ニッポンに比べても格下である。若いドライバーにとって、1年という時間は貴重だ。果たしてインディ・プロ参戦に意味があるのかどうか。武藤は随分悩んだそうだ。

 だが、武藤は海外進出に意味を見出した。元々彼はF1を目指して海外で本格的なレース活動に入った選手で、「自分には海外が合っていると思った」とその決断の理由を語る。しかも、ホンダのバックアップを受けているのだから、結果さえ残せばその先がある。

 問題は、アメリカで結果が残せるかどうかだった。これまで日本の若手選手のアメリカ進出は必ずしも成功しているとは言えない。レースのスタイルの違いがあるとはいえ、それは理由にならない。今、アメリカのトップカテゴリーであるIRLで活躍中の松浦孝亮は「アメリカで勝てないならF1でも勝てない」と、その覚悟を語っているが、その通り。

 正直なところ、武藤は大丈夫かなと、わたしは内心不安だった。ところがその不安を吹き飛ばす戦果が聞こえてきて、彼が日本国内で積み重ねた経験は無駄ではなかったと、国内レースの価値が評価されたような気分にすらなった。なかなか情報が入ってこないアメリカのレースではあるが、有望な若手日本選手が活躍を始めたことを心に留め置いていただきたい。

関連キーワード
武藤英紀

ページトップ