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有馬記念に向けて発進。
気丈な天才・武豊。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byYoko Kunihiro

posted2008/12/18 00:00

有馬記念に向けて発進。気丈な天才・武豊。<Number Web> photograph by Yoko Kunihiro

 天才の名をほしいままにする武豊騎手が、2週連続の落馬事故に遭遇した。エリザベス女王杯でのそれは、騎乗していたポルトフィーノがゲートから飛び出した最初の一歩目で馬自身が地面に鼻面をかすめたほどの大きなつまずきに起因したもので、まさに「どうすることもできない」不可抗力の事故。馬の前方に背負い投げを決められた武騎手は、その直後には必死で立ち直ろうとしたポルトフィーノに背中、肩、上腕をしたたか踏みつけられたそうだ。診断は「両肩打撲」だったが、当日の夜になってから腕が真っ黒に鬱血したという。打撲はあとからが痛い、と言われるそれである。

 翌週の事故は、起きたその瞬間に深刻な怪我を予感させるほどの激しいものだった。快調に逃げていたように見えた武騎手の騎乗馬(その日がデビュー戦だったセイウンアレース)が、突然前脚の支えを放棄するような体勢で倒れたのだ。これも、馬の故障という不可抗力によるものだった。

 「ウオーミングアップのときから、いい脚さばきをする馬だなと思っていましたし、レースでも事故の寸前まで完璧でした。予兆なんて全然……」と、武騎手。またまた馬場に頭から転げ落ちることを余儀なくされ、後続馬2頭も横倒しになった馬に触れて転倒してしまった。落ちたときの衝撃はうまく受け身をとって回避した武騎手だったが、後ろから来た馬に右手をかすめられて、尺骨(前腕部の骨)を骨折。全治まで1~2カ月の重傷ではあったが、実感としてはよくぞそれだけで済んだと思えるほどだった。

 名騎手と言われる人たちは、騎乗機会が多いのになぜか事故に遭わない。武騎手もデビュー21年で、大きな事故といえば'02年に負った骨盤骨折だけ。それだけに2週連続の不運は精神的にもこたえたはずだ。競馬の神様が采配する幸運を、一手に引き受けたようなこれまでの足取りだっただけに、それも当然ではある。

 しかし、すでに前向きさを取り戻している。なんの根拠もありませんが、と前置きしながらも、「有馬記念には乗りたい」と意思表示。その前日にあるラジオNIKKEI杯2歳Sにも間に合わせたい意向があるようだ。その馬はリーチザクラウン(牡2歳、栗東・橋口厩舎)。来春のダービー候補と見込まれている。

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