SCORE CARDBACK NUMBER

“カリスマ監督”の敗退。既に始まる次なる戦い。 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

posted2007/03/08 00:00

 「ワセダは、いやごめんなさい、サントリーは、ブレイクダウンを少人数で出そうとするチームなので……」

 2月18日、花園の日本選手権準決勝。39対17の大差でサントリーを破ったトヨタ自動車の会見で、朽木英次監督はつい口を滑らせた。それは、トヨタがこの試合にかけた気持ちの深さを象徴していた。

 その1週間前。サントリーとの対戦が決まると、朽木監督は「去年ここでワセダに負けて、相当落ち込んで、それをモチベーションにして1年間やってきた。悔しさ、辛さ、惨めさを、すべて次にぶつけたい」と言った。そのワセダから清宮克幸監督と佐々木隆道主将ら主力3選手が加わったサントリーは、トヨタから見れば憎きワセダそのもの。そんな思いが、言い間違いを誘ったのだろう。試合を控えたサントリーのある選手は「僕らは全然関係ない。とばっちりもいいとこですよ」とボヤいていたが……。

 かくして、清宮サントリーの1年目は無冠のまま終わった。

 酷なシーズンだったかもしれない。自信に満ち、ときに挑発的な言葉も駆使してチームを率いる清宮監督の言動は、チームを活性化した一方で周囲に敵も作った。清宮マジックと持ち上げるメディア、「次は日本代表の監督に」との気の逸った礼賛も重荷だったろう。「サントリーにだけは勝ってくれよ」。試合の後で、複数の対戦相手からそう言われたと、東芝のある選手は明かす。

 シーズンが深まるにつれ、サントリーの戦いからは活力が薄れ、特に試合の終盤は顕著に失速した。「試合だけでなく、シーズンを乗り切る力がなかった」。トヨタ戦の後、新人で全試合に出場した青木佑輔は言った。近年、社会人トップチームはシーズン終盤になると練習を週2〜3回に減らし、試合に備えたコンディショニングに重点を移す。だがサントリーは、週4回練習の基本を崩さなかった。

 「でも、若いチームはそうするしかないんです」と東芝の冨岡鉄平主将は言った。「僕らも最初は毎日2部練習でメチャクチャやった。来年のサントリーは強くなりますよ」。今は常勝集団となった東芝も、薫田真広監督−冨岡主将1年目の'02年度は東日本リーグ、社会人大会とも2位。日本選手権は準決勝で敗れている。

 1年後の戦いは、もう始まっている。

ページトップ