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パット・ライリーの後継者
スポールストラはまだ38歳。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2009/02/26 00:00

 犬に犬年齢があるように、NBAのヘッドコーチにも“コーチ年齢”があるに違いない。何しろ、NBAヘッドコーチに就任すると誰でも、まるで時の流れが速い異次元に迷い込んだかのように皺が深くなり、白髪が増えて、急速に年をとったように見えるのだ。

 そんな中で、マイアミ・ヒートのエリック・スポールストラは、まだ大学出たてのインターンにも見えるほど童顔だ。ヘッドコーチに就任して約9カ月、38歳のリーグ最年少ヘッドコーチである。

 といっても、決して頼りないわけでもない。むしろ、ベンチでは新人コーチとは思えないほど落ち着いた采配ぶりで、さすがに名将パット・ライリーが自分の後任に抜擢しただけあると納得させられる。2月10日現在、ヒートの成績は27勝24敗。勝率2割にも届かなかった前シーズンと比べればどんな成績でも前進だが、トレードの噂がついてまわるベテラン選手(ショーン・マリオン)や、1年目から頼らざるをえない新人選手たちを抱えるチームをうまく率いている。

 実はスポールストラはNBAでのプレー経験がない上に、過去のヘッドコーチ経験も、大学卒業後にドイツのプロチームで選手兼任コーチをしていた2年間だけ。'95年にヒートのビデオ・コーディネイターとして採用されて以来、13年かけてスカウト、そしてアシスタントコーチと一歩ずつ階段を昇り、頭角を現した実力派だ。かつてNBAチームのフロントで働いていた父の血が流れているのかもしれない。母はフィリピン出身、初のアジア系NBAヘッドコーチでもある。

 もともと、スカウト時代から詳細で情報量の多い資料をまとめることに長けている人だった。今はさすがに、レポート作成はアシスタントコーチたちに頼るというが、それでも毎日、これまでと同じように自分でも情報を確認する作業に時間を費やしているのだという。「細部まで準備することで、安心して試合に向かえるんだ」とスポエルストラは笑う。

 ヘッドコーチになって一番大変なことを聞くと、「なぜか、すぐに次の試合がやってくることかな。負けた後に気持ちを切り替えるのが難しい」と返ってきた。

 どうやら、いつの間にか彼も“異次元”に迷い込んでいたようだ。童顔に皺が増えるのも時間の問題かもしれない。

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