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難関の初防衛を果たした川嶋の次なる相手。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2004/10/07 00:00

 「すいません、KOできなくて……」

 横浜のWBC世界S・フライ級タイトルマッチで初防衛を果たした王者川嶋勝重の試合後の第一声がこれだった。世界14位のメキシコ人挑戦者ラウル・フアレスに大差判定勝ちも、3度のダウンを奪いながらKOに仕留め切れなかったのが不満だったのだ。師匠の大橋秀行会長も「今日の相手は倒さないと……」と注文をつけた。

 本来「KO狙い」は邪道とジムのトレーナーは教え子たちに諭すが、大橋・川嶋の師弟コンビはかなり本気だった。これには、最近のわが国ボクシング界の人気低迷が強く影響している。川嶋を含めてイーグル京和、新井田豊と3人の世界王者を擁しながら、隆盛には程遠い現状を打開するには、よりインパクトのある試合が必要で、それには王座獲得戦で徳山昌守を1ラウンドで沈めた時の豪快なKO勝ちの再現をと、強く意識していたのだ。

 挑戦者フアレスは元々打たれもろく、8年前に勇利アルバチャコフの世界フライ級王座に挑戦した時もやはり3度のダウンを奪われて判定負けしている。世界戦2連続KOを狙った川嶋は、2回にロングの右を頭部に決めて早々とダウンを奪ったことで、なおさら力が入り過ぎ、大振りになってしまった。被弾の多さも今後の反省材料だ。

 それはそれとして、難関の初防衛を果たしたことで川嶋は貴重な経験をした。初防衛戦は新王者にとってなかなかの難関で、過去のデータでも日本の世界王者47人中、無冠に追われたのが17人と、3人に1人の高率になっている('01年の王座返上の新井田は除く)。負けないまでも必ずといっていいほど苦戦しているのは、攻める側から一転守る側に替って最初の試合ゆえの勝手の違いもあるだろう。いくら「挑戦者の気持ちで戦う」と自らに言い聞かせても、無意識のうちに受け身となり本来のボクシングができなくなる。また、17敗の多くは、チャンピオンとして慣れないうちに世界戦規則通りいきなり最強挑戦者と対戦して敗れてしまったケースである。

 その点今回の川嶋のように指名試合前に1度軽い相手と対戦しておくのも一案だ。次はいよいよ1位のホセ・ナバーロが相手。シドニー五輪ベスト8からプロ転向以来20戦全勝の強豪だから、今度こそ王者川嶋の真価が問われる一戦となるに違いない。

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