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F1界を大きく揺るがす
バジェットキャップ問題。
~FIA会長モズレーの逆襲~ 

text by

今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byGetty Images

posted2009/06/18 06:00

強硬姿勢を取りながらも、’11年に延期する譲歩案も出したマックス・モズレーFIA会長

強硬姿勢を取りながらも、’11年に延期する譲歩案も出したマックス・モズレーFIA会長

 7戦6勝とJ・バトンの独走が続いているが、コース裏のパドックではスポーツとまったくかけ離れた次元の“政争”が5月から繰り広げられている。F1世界選手権を公認するFIAと、現在参加しているチーム側のFOTAとの「'10年エントリー問題」である。トルコGP決勝の朝にも、ウイリアムズとフォース・インディアを除く8チームの首脳と契約ドライバー16人が集まり、6月12日に控えたFIAの来季エントリー受理正式発表に備えて、現状説明と全員の統一意志確認が行なわれた。

 FIAとFOTA、両者がなぜここまで対立し、関係がこじれたかを細かく説明することは、この紙幅では到底できないが、論点を絞ると大きくは次の3つが原因だと解釈している。

(1) '10年から年間チーム活動予算総額の上限を4000万ポンド(約62億円)とするバジェットキャップを導入しようとしていること。

(2) 予算削減に応じないチームのエントリーは認めるが、応じたチームには技術ルール面で性能向上策を許可すること。

(3) 本来であれば11月に翌シーズンのエントリーを受け付ける慣例を急遽、半年も早めたこと。

 いずれも8チームはこれに猛反発している。(1)の予算制限はスタッフの解雇に繋がり、またどうやって“監視”するのかなど、メーカー系チームにとっては企業活動にかかわる問題である。(2)に関しては“二重構造ルール”のF1など、これまでの歴史のなかでありえず、モータースポーツの原則に反する。

 FIAのM・モズレー会長はF1公認団体の権力者として、メーカー系チームに対して一段と強硬姿勢を取ってきた。すでに5月29日にエントリー受付は締め切られ、予算削減に賛同するF3やGP2からの新規参入組が8チーム以上名乗りを上げている。FOTA側も条件付きでエントリー手続きはしたものの、認められなければ“独自シリーズ戦”の立ち上げに動く準備に取りかかっている。今後もさまざまな動向が予想されるが、早期決着に至るとはとても考えられない。

 こうした舞台裏のバトルが長引けば長引くほど、今年のチャンピオンシップへの興味が薄まることだけは確かだ。F1にとって大きなマイナスになると声を大にして言いたい。

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