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カド番から鮮やかな優勝を遂げた琴欧洲。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2008/06/12 00:00

 カド番脱出も束の間。再びカド番で迎えた夏場所で、窮地に追い込まれた大関琴欧洲が、鮮やかに蘇った。

 初土俵から史上最短の11場所で新入幕。新関脇の場所では初日から12連勝し、これまでの連勝記録を更新した。翌場所も好成績を挙げ、関脇はわずか2場所で通過。平成18年初場所で新大関となり、初土俵から19場所での大関奪取は幕下付け出しを除き、史上最速の記録だった。しかし、一気に頂点を極めると思われた破竹の勢いはここで急停止した。大関という地位の重責が、その長い手足に絡みつき、動きから「思い切り」を奪い取った。

 先場所までの大関在位14場所の成績は、最高成績が10勝3回という惨憺たる結果。昨年8月には、角界入門以来指導を仰いだ元横綱琴櫻の先代佐渡ケ嶽親方が急逝。精神的支えを失い、さらに怪我にも苦しめられる。昨年秋場所で右肩、九州場所で古傷の右膝、先場所は左上腕部を次々に負傷。わずか3場所で2回の途中休場に追い込まれた。

 「ばかやろう」「このやろう」と叱咤し、時には鉄拳をも辞さなかった「おやじ」(先代親方)の消えた佐渡ケ嶽部屋。先代の悲願だった横綱育成を託され部屋を継いだ娘婿、新親方(元関脇琴ノ若)との二人三脚の出直し稽古が始まった。端正なマスクの師弟が、鬼の形相で先代から引き継いだ「荒稽古」を繰り返した。

 課題は、無類の上半身のパワーを活かすため、下半身の安定感を取り戻すこと。連日200回の四股で筋力を強化。立合いの2歩目で内側に踏み込む点と、レスリング時代の半身になる悪癖を封印した。しっかりと外に踏み出し、股を開くことで腰が下がり、202cm155kgの体が理想的に攻撃に活かされるようになった。

 無心で相撲に集中した琴欧洲は、盤石の安定感を見せつけた。低く鋭い立合いで、真正面から相手と対し、常に膝を曲げ、低い位置で腰を安定させられるようになった。強烈に引き付け、余裕を持ってじわじわ寄り立てる寄り身には、一分の隙も無い。朝青龍、白鵬との優勝を懸けての両横綱戦も、完璧な内容で撃破、ついにモンゴル勢の14連覇に待ったをかけた。

 全勝こそ逃したが、史上7人目のカド番優勝で、琴欧洲が主役に躍り出た場所だった。

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