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本山哲の振る舞いが教えてくれること。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2007/03/22 00:00

 競技中にコメントを取ろうとしたTVクルーに対し邪険な態度を取ったのがそのまま放映されたとかで(残念ながらわたしはその映像を見てはいないが)、インターネット上で本山哲に対する批判を見聞きする。

 しかしそもそも競技中の選手に近寄って何らかのコメントを取ろうとする方がどうかしているのであって、わたしは本山を全面的に擁護する。

 確かに競技中の真剣な本山の姿を伝えるという意味で、件のTVクルーは良い仕事をしたのかもしれないが、時と場所と状況をわきまえず自分の要求を相手に押しつけるケースが、我々メディアにも、場合によってはファンにも見られるのがわたしには残念だし、選手たちが大変気の毒だ。

 モーターレーシングでは安全性確保のため、競技が行われるコースと観客席は遠く隔てられている。ところが一旦パドックパスやらプレスパスという特別な通行手形を手に入れると、選手と面と向かうことのできる、まさに楽屋へ入場できてしまう。選手との垣根がなくなるのは良いことなのだろうが、きちんとした管理がないままに競技中の選手をいきなり外野に放り出せば、摩擦も起きる。

 わたしは、ファンに対してもメディアに対しても、現場の選手が常に愛想を振りまく必要はないと考える。その点、本山の振る舞いは多くの選手の見本になる。

 実際、本山哲は成績もさることながら、その手のサービスについても国内レース界のトップを行く選手である。

 外から眺めていると、彼は自分で競技に集中しなければならないときにはきちんと競技に集中する。だが時間が空いたとなるとスイッチが切り替わったようにファンサービスに努めている。同じパドックを歩いていても、戦う本山とサービスをする本山がいる。これをプロという。

 選手がこれだけプロの仕事をしようとしているのだから、メディアもきちんとそれに応えるべきだし、ファンの皆さんも彼らの置かれた状況を理解すべきだろう。選手たちはまず競技のためにそこにいるのだ。

 それを理解して接すれば、選手も競技とサービスの時間を切り替えやすくなり、その分、競技のレベルもサービスの質も上がるに違いないから。

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