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フェデラーが逃れたモンスターの呪縛。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2009/01/06 00:00

フェデラーが逃れたモンスターの呪縛。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 ロジャー・フェデラーが'09年末には世界ランキング1位に返り咲くと予想する人が44%、ラファエル・ナダルが1位の座を守ると見る人が34%。これは、男子ツアーを運営するATPが公式サイトを通じて行ったアンケート投票の結果である。

 '08年末の時点で、1位ナダルと2位フェデラーのポイント差は1370。四大大会で優勝しても追いつけないほどの大差だ。しかも、フェデラーの背後にはわずか10ポイント差で3位のノバク・ジョコビッチが迫っている。にもかかわらず、半数近いファンがフェデラーの1位奪回を予想しているのが面白い。

 四大大会で史上最多14度の優勝を誇るピート・サンプラスも、フェデラーの巻き返しを予想する。サンプラスはシニアツアーでの会見で「来季のナダルには注目だ。常に体調を保って快進撃を続け、トップの座を守るというのは相当、骨の折れることだからね」と話した。8月に初めて1位の座に就いたナダルは、今後、その地位を守るために大きなエネルギーを費やすことになる。したがって、追いかける立場のフェデラーが有利、というのがサンプラスの見方だ。

 トップの座を守るとは、どれほど困難なことなのか。1年ほど前、フェデラーはこんなことを言っている。

 「僕は自分でモンスターを作ってしまったんだ。すべての大会で優勝しなければならないと思い込んでいた。1セット落としただけでも、出来がよくなかったと言われてしまうんだ。そんなモンスターを作ってしまったのは、僕の失敗だった」

 勝って当たり前の「モンスター」であり続けるのは、どれだけつらいことなのか。テニス界の王者が、その重圧について初めて率直に語ったのだ。その後、フェデラーは237週連続で守り続けた1位の座をナダルに譲り、モンスターの呪縛から逃れることになる。

 史上最多の通算286週、1位の座を守ったサンプラスも、トップの重圧を十分すぎるほど味わった選手だ。だからこそ、彼の“予言”は信憑性が高い。重圧から解放されたフェデラーが、その才能を爆発させ、さらに高い次元のプレーを見せてくれるのではないか。サンプラスの期待も、また、フェデラーを支持するファンの期待も、おそらくそこにある。

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