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混乱する肖像権ビジネス。着地点は見つかるのか? 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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posted2004/12/02 00:00

 日本オリンピック委員会(JOC)が来年から実施する予定だった「シンボルアスリート」制度が、暗礁に乗り上げている。同制度はJOCが各競技のトップ選手と肖像権使用の契約を締結し、協賛金を支払ったスポンサーに対しCM出演など選手の肖像権使用の権利を与えるもの。競泳の北島康介やスピードスケートの清水宏保ら15人を「シンボルアスリート」候補としてピックアップしていた。ところが、ここへ来て一部の選手が契約の締結を拒否していることが分かったのだ。すでに北島と清水は辞退の意向を表明し、陸上の室伏広治、柔道の野村忠宏、谷亮子ら人気選手との交渉も難航している模様で、このままでは同制度が骨抜きとなるのは確実だ。

 辞退の理由として選手側は「シンボルアスリートになるとJOCスポンサー以外のプロ活動が制限される」ことや、「協力金が安すぎる」ことなどを挙げている。JOCが選手に支払う協力金は当初年間1000万円の予定だったが、選手側の要望を取り入れて倍額の年間最大で約2000万円に上げた。しかし、アテネ五輪で2冠に輝いた北島の場合、広告界ではCM1本5000万円の価値があると言われており、金額面での差はまだ大きい。しかも、スポンサーからの協賛金は逆に従来の4年間2億円から3億円に値上げする方針で、このままでは選手側だけでなくスポンサー側からも不満が噴出しそうだ。

 各競技団体が一括して選手の肖像権を管理していた'80〜'90年代は、JOCがスポンサーから協賛金を集め、その代わりに選手のCM出演を認める方式が定着していた。しかし'90年代後半から急速にプロ化が進み、選手の商業活動が認められるようになると、当然のように肖像権の問題がクローズアップされるようになった。近年はマネジメント会社と契約する選手も増え、以前のように「選手の好意」に期待するのも限界となりつつある。

 マイナー競技の選手たちにとってはJOCからの分配金は必要不可欠だ。「自分だけが儲かればいい」という選手はいないだろうが、他の競技団体のために自分の商業活動が制限されるのも納得がいかないだろう。その辺の折り合いをどこでつけるのか。「シンボルアスリート」制度のスタートまでにはまだまだ紆余曲折がありそうだ。

JOCのシンボルアスリート候補

陸上 室伏広治(ミズノ)
  野口みずき(グローバリー)
水泳 北島康介(日体大)
柔道 谷亮子(トヨタ自動車)
  野村忠宏(ミキハウス)
  井上康生(綜合警備保障)
レスリング 浜口京子(ジャパンビバレッジ)
卓球 福原愛(青森山田高)
スキージャンプ葛西紀明(土屋ホーム)
 モーグル上村愛子(北野建設)
スケートスピード清水宏保(NEC)
  岡崎朋美(富士急)
 フィギュア荒川静香(プリンスホテル)
  村主章枝(ダイナシティ)
  安藤美姫(中京大中京高)

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