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「大人」のサッカーを見せたA代表と…。 

text by

永井洋一

永井洋一Yoichi Nagai

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2004/11/04 00:00

「大人」のサッカーを見せたA代表と…。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 10月13日のW杯1次予選オマーン戦では、日本代表の成熟した試合運びが際立った。高い位置からの積極的な守備とスピーディーなカウンターを持ち味とする相手に対し、アウェーで「引き分け以上」という条件を満たして試合を終わらせるために何をすべきか。選手の一人ひとりが、それを十二分に理解し、実践できていた。

 とりわけ、中村俊輔のゲームコントロールは見事という一言に尽きる。見ている側が「今だ、パスを出せ」と思う瞬間があっても、確実なパスコースの確保と味方の十分なフォローアップがない時には、カウンターのリスクを考えてパスを出さない。そして、日本の攻撃のスピードダウンをとらえて相手がボールを奪いに出てくると、巧みなテクニックとボディーバランスを駆使してボールをスクリーンする。「速さ」を身上とする若いオマーン選手は粘り強く食い下がることができず、じれてファウルを犯す。リスタートとなったプレーは再び日本のポゼッションにつながり、オマーンのイライラは募っていく。決勝点は、その中村が「ここぞ」という瞬間に体を投げ出して送ったピンポイントパスで生まれた。

 中村だけでなく、小野伸二も、宮本恒靖も、中澤佑二も、試合の流れのTPOに応じた成熟したプレーを見せた。まるで高校サッカーのような単純なクリアーやタッチアウトさえもあった。しかし、そんなシンプルなプレーを織り交ぜながらも、彼らはまるで、自分たちが描いたストーリーがシナリオ通りに進む快感を楽しんでいるかのようだった。苦戦必至、絶体絶命と騒がれた試合を制しても、必要以上に興奮することなく、皆が涼しい顔をしていた。そして、数日後にはそれぞれが所属チームで時差、気候差、精神的ストレスなど感じないが如くのプレーを見せていた。

 A代表が「大人」のサッカーを見せる一方で、弟分の五輪代表、ユース代表、U―17代表のプレーが気になる。よくがんばる、いい子たちなのだが、特に年齢が下がるほどに、規格通りのプレーを「させられている」という印象が強い。「がんばる」のはいいのだが、その先の勝負で決め手になる武器と、その使い方が見えてこない。ひたすら頑張り続ければ何とか評価につながるという環境で育ったからだろうか。彼らがA代表の選手のように「大人の選手」になる日は訪れるのだろうか。

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