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国際柔道連盟理事選で、山下氏落選の内部事情。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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posted2007/10/04 00:00

 柔道の世界選手権で日本勢は思わぬ苦戦を強いられたが、実は場外での戦いでも完敗していた。大会が始まる前に開かれた国際柔道連盟(IJF)の役員改選で、教育・コーチング理事の再選を目指した山下泰裕氏が落選。IJFの執行部から日本人が一人もいなくなってしまったのだ。その後の折衝で全日本柔道連盟の上村春樹専務理事が会長指名の理事ポストに就くことになったが、重要な案件を決める際の議決権はなく、日本の影響力低下は避けられない情勢だ。

 今回の“政変”は、マリアス・ビゼール新会長(オーストリア)による“報復”が主な要因となった。欧州連盟会長も務めるビゼール氏は'05年の会長選に立候補したが、日本が朴容晟前会長(韓国)を支持したために落選。以後は朴体制に反旗を翻し、前会長を辞任に追い込んだ。同時に前会長を支持した日本も敵対視し、今回の役員改選では欧州勢がそろって山下氏の対立候補に投票した。

 IJF内における日本と欧州勢の対立は今に始まったものではない。日本人にとって柔道は単なるスポーツではなく「武道」である。「礼に始まって礼に終わる」ことが大切で、勝敗は二の次とされる。決め技もいかにきれいに投げるかが重要であり、実際に講道館ルールの国内大会では「有効」が最低のポイントで、IJFルールの「効果」は存在しない。だが、欧州勢にとっては「JUDO」も単なるスポーツの一つにすぎず、したがってどんな形であれ勝つことがすべてに優先する。スポーツである以上、商業化は当然の流れで、カラー柔道着の採用やゴールデンスコア方式の導入など、テレビを意識した様々な改革を実施してきた。いくら日本が「柔道着の白色は神聖なもの」と説明しても、「武道」の観念がない欧州では所詮相手にされないのが実情だ。柔道をサッカーや陸上に負けない人気競技にしようとする欧州勢にとって、日本は文字通り目の上のコブで、山下氏の落選はすべて筋書き通りと言っていい。IJFの執行部に議決権を持つ日本の役員が一人もいなくなるということは、今後更に柔道がスポーツ化、商業化への道を突き進むことを意味する。

 新しい時代を迎えた国際柔道界で、本家の日本はどうすればいいのか。関係者の悩みは深い。

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