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全米オープンらしさをかき消した
NYの荒天。
~悪天候に泣いたT・ウッズ~ 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

PROFILE

photograph byJun Hiraoka

posted2009/07/03 06:00

全米オープンらしさをかき消したNYの荒天。~悪天候に泣いたT・ウッズ~<Number Web> photograph by Jun Hiraoka

連覇を期待されたタイガー・ウッズは4打差の6位に終わった

 全米オープン取材に赴くため、JFK空港でカメラマンたちと待ち合わせた。3人がほぼ同時刻に到着するはずだったが、2人の飛行機は追い風に乗って1時間も早く到着。だが、もう1人の飛行機は突然の雷雲に阻まれ、上空旋回を続けて着陸が4時間も遅れた。諸々の予定が狂ったが、航空会社は「天候はコントロールできない」と知らん顔。「仕方がないさ」と思うしかなかった。

 荒天に見舞われ、中断続きの変則進行になった今年の全米オープンは、まさに「悪天候で混乱した空港」みたいなものだった。雨雲や雷雲の合間を縫って運良く飛べた「飛行機」はその恩恵に与(あずか)った。が、悪天候に直面した「飛行機」は最後まで予定が狂いっぱなしの憂き目を見た。

「幸運な飛行機」の乗客を眺めていたウッズ。

 ラッキー派の筆頭は予選ラウンドで4位に立った矢野東。激しい降雨だった木曜は1ホールもプレーせず、天候が回復した金曜日に一気に1.5ラウンドをこなしてスコアを伸ばした。予選終了時点のトップ10全員が矢野と同じ巡り合わせでプレーした選手。上位陣に無名の若手が名を連ね、過去1勝のルーカス・グローバーが優勝にこぎつけたのも、天候との巡り合わせに恵まれた結果だ。

 逆の巡り合わせになった不運な選手たちは「不公平だ」と嘆きたかったに違いない。が、遅れた飛行機に乗り合わせた乗客と同じで「仕方がないさ」と諦めるしかない。そんなアンラッキー派の筆頭が、2連覇を期待されながら6位タイに甘んじたタイガー・ウッズだった。通常のツアーの大会とはコースの仕様も設定も別格のはずのメジャーを、これまで14回も制覇してきたウッズは、今年も別格であるはずのコース設定を想定して対策を講じ、ベスページに乗り込んできた。

 しかし、荒天への対処で設定が緩められ、史上最長の525ヤードになるはずだった7番パー4は最後まで史上最長にされずじまい。「いつもの全米オープンならサンドウエッジで打ってもグリーンでボールが止まらないのに、今年は3番アイアンで打っても止まった。こんな設定は全米オープンというより毎週のツアーの大会みたいだ」。出だしから食らった肩透かしは最後までウッズの予定を狂わせ、「幸運な飛行機」たちはそんなウッズをせせら笑うかのように先へ先へと飛んでいった。

存在意義が問われる個性なきメジャー。

 こんな名言がある。「マスターズはfun、全米オープンはwork」。マスターズは勢いよくスコアを伸ばし、全米オープンはタフな設定の下で苦しみながら戦う。それが両大会の個性とされてきた。しかし近年はオーガスタが難しくされすぎてスコアが伸びず、「まるで全米オープンみたいだ」と批判続出。今年は設定が緩められた。全米オープンも難度が年々高められ、苦しいばかりで楽しくないという声が聞かれた。そこで今年は当初から厳しい設定とやや緩い設定の双方を用意。展開を見ながら調整していくはずだった。だが、想定外の荒天で主催者にも「コントロールできない」誤算が生じ、ウッズが指摘したように全米オープンらしからぬ全米オープンと化した。

 そう言えば、アンラッキー派で予選落ちした今田竜二は「最近は通常の大会のコース設定がハイレベルなので毎週が全米オープンみたい。だから今週は全米オープンという気がしない」と言っていた。ウッズとは逆方向から眺めた意見だが、ウッズも今田も言いたいことは同じである。

 メジャーの個性が失われつつある――それは、なんとも淋しい。

■関連コラム► 今田竜二はアメリカでなぜ生き残れたのか。 (2009年1月16日)
► 全米オープンに学ぶ、ラフとスコアの密な関係。 (2006年6月22日)

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