NumberEYESBACK NUMBER

W杯欧州戦線に異変?大国に今、欠けていること。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph by

posted2005/09/29 00:00

 「エリクソンを首にしろ!」

 9月7日のW杯予選の北アイルランド戦でイングランドが負けると、アウェーにかけつけたサポーターは監督の解任を叫び続けた。翌朝のデイリー・エクスプレス紙も「これはエリクソンのアイリッシュ・ジョークか?」と見出しをつけた。今回の予選で北アイルランドは1勝しかしてなかったのだから、イングランド人が怒るのも無理はない。

 これでグループ6の首位ポーランドとの勝ち点差は5に広がった。10月上旬のオーストリア戦とポーランド戦に2連勝しなければ、1位通過することはできなくなったのである。

 イングランドは8月のデンマークとの親善試合でも1対4で大敗している。9月3日まで予選では無敗で、W杯の優勝候補にもなっていたイングランドに何が起こっているのか?その原因をポーランド代表FWのツラフスキはこう考えている。

 「イングランドはスター選手が多すぎるから、チームとして機能していない。個人のレベルは高いけど、まとまらなければ意味がないよね」

 北アイルランド戦では、こんなシーンがあった。

 相手へのファウルでイエローカードを受けたルーニーは、なおも興奮が収まらず、危うく相手に手を出しそうになった。すぐにベッカムが落ち着かせようとしたが、なんとルーニーはベッカムに怒鳴り返したのである。ハーフタイム中も2人の口ゲンカは続いた。チームがまとまっていないことを、象徴する場面だった。

 イングランド紙は「戦い慣れた4−4−2でなく、4−5−1にしたのが敗因」と指摘しているが、問題はそんなに単純ではない。イングランドにはベッカムやジェラードといったスター選手がいる一方で、チェルシー勢を中心に若手が成長して、ポジション争いが激しくなっている。エリクソンは、スターのプライドを傷つけずに若手をミックスすることに四苦八苦しているのだ。慣れない左ウィングに起用されたルーニーは、その最大の犠牲者だった。エリクソンは「絶対に辞任しない。たった1敗しただけで騒ぎすぎだ」と開き直っているが、10月の予選で再び番狂わせが起こるかもしれない。

 イングランドと同様に、苦戦しているのがスペインだ。

 9月7日にグループ7の首位セルビア・モンテネグロと痛恨のドロー。気づけば3位のボスニア・ヘルツェゴビナに勝ち点差1に迫られてしまった。アラゴネス監督は「うちの平均年齢は約24歳で、経験が足りない。予選の戦い方がわかってない」と嘆いた。最悪プレーオフ進出も危うくなってきた。

 一方、ジダンが復帰したフランスが調子を上げている。

 9月には今回の予選で初めて2連勝し、グループ4の首位スイスに勝ち点で並ぶことに成功した。DFギャラスは「ジダンが試合のペースをコントロールしてくれるので、他の選手は楽にスペースを見つけられる。ジダンが全てを簡単にしてくれた」と“ジダン効果”を絶賛している。

 ただ、不安なのがジダンとアンリのケガ。2人とも股関節を痛め、全治3週間と診断された。大一番となる10月のスイス戦に2人が間に合うかが予選突破のカギとなる。

 EU統合にともなって移籍が活発化し、各国の実力差は縮まっている。

 ただ有名選手を集めれば勝てるという時代はおわった。チームとしての完成度を高めることが、サッカー大国にも求められている。

ページトップ